読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

アンソロジー

『むずかしい愛』

アンソロジーというと、ついついホラーやSF、ミステリーを思い浮かべてしまいます。しかし、それが主流かといわれると何ともいえません。 恋愛小説は、僕が最も苦手とするジャンルなので、余りかかわってきませんでしたが、ひょっとするとそちらの方が読者…

『世界ショートショート傑作選』

一九七〇〜一九八〇年代にショートショートが流行していたことは以前も書きました。各務三郎編の『世界ショートショート傑作選』(写真)も、その時代に刊行された海外のショートショート集です。 ショートショートの定義を巡る議論は、うんざりするほど繰り…

『アメリカほら話』『ほら話しゃれ話USA』

ユーモア小説の好きな僕は、当然ながら、ほら話(Tall Tale)にも目がありません。 ほら話は世界各国に存在しますが、やはりアメリカの伝統的な民話を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。 それらが日本語で読める本として、『ニグロ民話集』『ちょっ…

『恐怖の愉しみ』

平井呈一といえば、ある年齢以上の恐怖小説好きにとっては無視することのできない存在です。子どもが読むものと思われていた西洋の怪談を、大人の鑑賞に堪える作品として翻訳、紹介してくれた功績はとても大きい。 彼が編訳した東京創元社の『世界恐怖小説全…

『西部の小説』

以前書いたとおり、古く稀少な西部小説は入手が難しい。 ヤフオクでたまに出品されても、終了間際になるとわらわらと人が集まり、あっという間に値が吊りあがってしまいます。西部小説の愛好家はそれほど多くないと思うのですけれど、一体どこに潜んでいるの…

『ドラキュラのライヴァルたち』『キング・コングのライヴァルたち』『フランケンシュタインのライヴァルたち』

The Rivals of Dracula: Stories from The Golden Age of Gothic Horror(1977)/The Rivals of King Kong: A Rampage of Beasts(1978)/The Rivals of Frankenstein: A Gallery of Monsters(1977)Michel Parry ミシェル・パリー(※1)はホラー小説のア…

『ラブストーリー、アメリカン』

Love is Strange: Stories of Postmodern Romance(1994)Joel Rose, Catherine Texier『ラブストーリー、アメリカン』(写真)は、ジョエル・ローズとキャサリン・テクシエが編んだ恋愛アンソロジーです。 とはいえ、甘く切ない短編小説が読みたい方には全…

『真夜中の黒ミサ』『悪夢の化身』『13人の鬼あそび』『神の遺書』

A Century of Horror Stories(1935)Dennis Wheatley「恐怖の一世紀」は、作家のデニス・ホイートリーが、一九三五年までの約百年間(※)に書かれたホラーの短編のなかから五十二編を選んだアンソロジーです。 原書から数編割愛して翻訳するなど中途半端な…

『世界滑稽名作集』

『世界滑稽名作集』(写真)は、ユーモア作家の東健而が編訳した滑稽小説のアンソロジーです。 五人の作家を選んでいますが、ジーン・ウェブスター、ドナルド・オグデン・ステュアート、P・G・ウッドハウスの収録作に関してはほかにも翻訳があるので、この…

『バットマンの冒険』

The Further Adventures of Batman(1989)Martin H. Greenberg 一九三九年に誕生したバットマン(※)の五十周年を記念して企画された『バットマンの冒険』(写真)は、依頼型のアンソロジーです。 編集者、アンソロジストのマーティン・H・グリーンバーグ…

『ミニ・ミステリ100』

Miniature Mysteries: 100 Malicious Little Mysteries(1981)Isaac Asimov, Martin Harry Greenberg, Joseph D. Olander 前回に続いて、アイザック・アシモフ、マーティン・H・グリーンバーグ、ジョゼフ・D・オランダーの三人が編んだショートショートの…

『三分間の宇宙』『ミニミニSF傑作展』

100 Great Science Fiction Short Short Stories(1978)/Microcosmic Tales: One Hundred Wondrous Science Fiction Short-Short Stories(1980)Isaac Asimov, Martin Harry Greenberg, Joseph D. Olander 僕が中学生の頃、ショートショートが流行していま…

『壜づめの女房』

早川書房の「異色作家短篇集」は、一九六〇年から一九六五年まで三期に分けて十八冊が刊行されました。十七巻までが個人の短編集で、最終巻(※1)の『壜づめの女房』(写真)のみがアンソロジーです。 この叢書は、目の写真が大きく印刷された函と、期ごと…

『魔女も恋をする』『たんぽぽ娘』『見えない友だち34人+1』

僕が中学生の頃、第何次目かのSFブームが起こりました。それに便乗したのか、コバルト文庫(当時は「集英社文庫コバルトシリーズ」)でも海外のSFやホラーのアンソロジーが盛んに刊行されました。 そのなかで印象に残っているのは、やはり「海外ロマンチ…

『魔女たちの饗宴』

ロシアの女流作家というとリュドミラ・ウリツカヤを思い浮かべる方が多いと思いますが、「ほかに誰の作品を読んだことがありますか?」と問われたら、「むむむ」と唸ってしまうかも知れません。研究者ならいざ知らず、一般の読者にはほとんど知られていない…

『道のまん中のウェディングケーキ』

The Wedding Cake in the Middle of the Road: 23 Variations on a Theme(1992)Susan Stamberg, George Garrett このブログでアンソロジーをほとんど扱ってこなかったのには、以下のような理由があります。「好きな作家と嫌いな作家の差が激しいので、単著…

『怪奇と幻想』

1975年に角川文庫から刊行されたホラー小説のアンソロジー(全3巻)です。不気味なカバーイラストと各巻末に収められたノンフィクションが特徴です。

『ブラック・ユーモア傑作漫画集』

一九七〇年に早川書房より刊行された「ブラック・ユーモア選集」は、同社の書籍の巻末広告にもよく掲載されていたので、ご存知の方も多いことでしょう(後に改訂版も発行された)。 広告には全六巻として、以下の書名が並んでいます。『幻の下宿人』ローラン…

『ユーモア・スケッチ傑作展』『すべてはイブからはじまった』

このブログの「書名一覧」をみていただくと一目瞭然ですが、僕はユーモア小説に目がありません。 ミステリーや恋愛小説などは年に一冊読むかどうかであるにもかかわらず、広い意味でのユーモア文学は書棚の半分を占めるといっても過言ではないでしょう。 当…

『エバは猫の中』

サンリオはSF文庫以外にも、一般文学などを扱った「サンリオ文庫」を発行していました(一九八三年十月発行の『エレンディラ』から、一九八七年二月発行の『フローティング・オペラ』までの約三年半)。 発行点数は少なかったものの、ラインナップは豪華で…

『12人の指名打者』

野球小説に外れなし。 ……なんて偉そうにいうほど沢山読んでいるわけではなく、それどころか、積極的に買い求めることすらありません。まあ、本当のところは「小説で野球が上手く扱われていると嬉しくなってしまう」だけだったりします。 そんな感じですから…