読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

スコットランド

『あっぱれクライトン』J・M・バリー

The Admirable Crichton(1902)J. M. Barrie 河出書房の市民文庫は、一九五一年一月から一九五四年一月までのちょうど三年間だけ存在した文庫です。 現在の文庫本より左右がやや短く、オレンジと白のツートンカラーが特徴的です。カバーはなく、パラフィン…

『ユーラリア国騒動記』A・A・ミルン

Once on a Time(1917)A. A. Milne A・A・ミルン(※1)といえば、何といっても『くまのプーさん』(1926)が有名ですが、『赤い館の秘密』(1922)といったミステリーや、P・G・ウッドハウスが「英語で書かれた最高の喜劇」と絶賛した『The Dover Road…

『快楽亭ブラック集』快楽亭ブラック

Kairakutei Black I 明治・大正時代、英国人の噺家が人気を博していました。彼の名は、初代快楽亭ブラック。 幼少の頃に日本を訪れたブラックは、両親が帰国した後も日本に留まり、やがて日本人の養子となり、日本人と結婚もしました(本名はヘンリー・ジェ…

『蜂工場』イアン・バンクス

The Wasp Factory(1984)Iain Banks この本は、初刷が一九八八年三月で、二刷が一九九九年四月ですから、事実上の復刊でしょう(フェアに合わせた?)。今はまた品切れみたいですが、文庫なので新古書店でもよくみかけます。 イアン・バンクスは、SFを書…

『ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど』アラスター・グレイ

Ten Tales Tall & True: Social Realism, Sexual Comedy, Science Fiction And Satire(1993)Alasdair Gray スコットランドの作家というと、ウォルター・スコット、ロバート・ルイス・スティーヴンソン、J・M・バリー、ジョージ・マクドナルド、ミュリエ…

『アルクトゥールスへの旅』デイヴィッド・リンゼイ

A Voyage to Arcturus(1920)David Lindsay サンリオ文庫のコンプリートまで、いよいよ残り一冊となりました。 こういう時代ですから、その気になればいつでも揃ってしまうのですが、簡単に入手したのでは面白くありません。掘り出しものとの出合いを気長に…

『ミス・ブロウディの青春』ミュリエル・スパーク

The Prime of Miss Jean Brodie(1961)Muriel Spark このブログは、書店で普通に買える書籍は取り上げない方針なので、復刊の気配のある本はなるべく早く扱ってしまわなくてはいけません(※1)。この本も、読みたい人が多く、いつ復刊されてもおかしくない…

『邪魔をしないで』ミュリエル・スパーク

Not to Disturb(1971)Muriel Spark 日本で人気があり、古書の相場が高いのに、絶版の本が多い作家がいます(飽くまで個人的な印象ですが、ナボコフ、ブローティガン、デリーロ、残雪など)。 ミュリエル・スパークも、僕のなかでは、そんな作家のひとりで…

「異色作家短篇集」

二度目の復刊となった早川書房の「異色作家短篇集」が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです(写真)。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありまし…