読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

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YouTubeを始めました。 オリジナルのショートショートを朗読(音声合成)しています。 ジャンルは、SF、ホラー、ミステリー、ファンタジー、ユーモアなどのエンターテインメント系です。 www.youtube.com

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

『魔の配剤』『魔の創造者』『魔の生命体』『魔の誕生日』『終わらない悪夢』ハーバート・ヴァン・サール

Pan Books of Horror Stories(1959-1984)Herbert van Thal「ソノラマ文庫海外シリーズ」には「恐怖の一世紀」のほかに、もうひとつホラーのアンソロジーシリーズがあります。 それが、ハーバート・ヴァン・サール編の『Pan Books of Horror Stories』です…

ミステリーっぽい短編小説

海外の、ミステリー作家以外が書いたミステリーっぽい短編小説を紹介しています。

つながる海外文学 ―初心者におすすめする連想読書法

「これから海外文学を読んでみたいと思っているけど、何を読んでよいのか分からない」方のために「つながりで選ぶ海外文学」を紹介しています。

『恋のエチュード』アンリ=ピエール・ロシェ

Deux Anglaises et le continent(1956)Henri-Pierre Roché アンリ=ピエール・ロシェは画商や美術評論家で、豊富な恋愛体験をもとに二冊の自伝的小説を書きました。 処女作『突然炎のごとく(原題:Jules et Jim)』(1953)(写真)は、フランソワ・トリ…

『異形の愛』キャサリン・ダン

Geek Love(1989)Katherine Dunn キャサリン・ダンの『異形の愛』(写真)の原題にある「ギーク(geek)」とは、見世物小屋で鶏を食いちぎって生き血をすする芸人のことです。 訳者の柳下毅一郎によると「geekという言葉を、その芸をあらわすものとして最初…

『缶詰横丁』ジョン・スタインベック

Cannery Row(1945)John Steinbeck 終戦の年に発表されたジョン・スタインベックの『缶詰横丁』(写真)は、戦争文学ではありません。 当時の読者の多くは『月は沈みぬ』のような作品を期待していたそうですが、スタインベックはカリフォルニア州モントレー…

『恋人たち』フィリップ・ホセ・ファーマー

The Lovers(1952)Philip José Farmer フィリップ・ホセ・ファーマーの『恋人たち』(写真)は、ふたつの点で革新的なSFといわれています。 それまでほとんど扱われてこなかった「セックス」と「宗教」を取り入れたためです。 宗教に関しては、ユダヤ教を…

海外文学におけるハゲ

注:二〇一九年九月二十七日に書いた記事に、新しいもの(NEWマーク付)を随時追加しています。そのたびに日付を更新します。 人生において、死、性、病、恋愛、人間関係と同じくらい悩ましい問題であるにもかかわらず、文学は「ハゲ」をきちんと扱ってこな…

『歳月のはしご』アン・タイラー

Ladder of Years(1995)Anne Tyler アン・タイラーは、主にアメリカの中流階級の家庭、熟年夫婦、中高年の男女を描く作家で、本国だけでなく、日本でも人気があります。 分類すると、家族小説や家庭小説になりますが、実は家族のなかで居場所をみつけられな…

『ゴルフ奇譚集』ジャン・レイ

Les Contes noirs du golf(1964)Jean Ray 数多あるスポーツのなかでも、ゴルフが特に文学と相性がよいのは、現役でプレイする人数の多さと多様性にあるのではないでしょうか。 ゴルフに取り憑かれた、いわゆる「ゴルきち」たちは、誰の身近にも存在します…

『モンキー・ワイフ』ジョン・コリア

His Monkey Wife: or, Married to a Chimp(1930)John Collier ジョン・コリアといえば、日本においては『炎のなかの絵』や『ジョン・コリア奇談集』などによって、「切れのよい怪奇・幻想の短編を得意とした作家」として認識されているのではないでしょう…

『作者を探す六人の登場人物』ルイジ・ピランデルロ

Sei personaggi in cerca d'autore(1921)Luigi Pirandello メタフィクションとは単なる作中作ではなく、フィクションに関するフィクションであり、自己言及や自己批判の機能を有します。 メタシアター(メタドラマ)も同様で、ライオネル・エイベルによる…

『暗い森の少女』ジョン・ソール

Suffer the Children(1977)John Saul スティーブン・キングやピーター・ストラウブよりやや遅れて登場したジョン・ソールのデビュー作が『暗い森の少女』(写真)です。 この小説は米国でベストセラーになったためか、早くも翌年には翻訳されています。 二…

『六番目の男』フランク・グルーバー

Fort Starvation(1953)Frank Gruber フランク・グルーバーは、ミステリーを中心に数多くの作品を残したパルプ作家で、日本ではジョニー・フレッチャーとサム・C・クラッグのコンビが活躍するシリーズが最も有名でしょうか。こちらは現在でも未訳の作品が…

『ポドロ島』L・P・ハートリー

L. P. Hartley L・P・ハートリーの『ポドロ島』(写真)は「KAWADE MYSTERY」の一冊として刊行されました。 KAWADE MYSTERYは装幀もイラストも可愛いのですが、マイナーな作家が多かったせいか、二年ほどでなくなってしまいました(わずか十一冊刊行された…

『バートルビーと仲間たち』エンリーケ・ビラ=マタス

Bartleby y compañía(2000)Enrique Vila-Matas 僕は以前から、作品を生み出さなくなった芸術家に興味がありました。 形として残さなくなったのか、創造すること自体をやめてしまったのか、はたまた、別の形を選択したのか。 人によって事情は異なるでしょ…

『北ホテル』ウージェーヌ・ダビ

L'Hôtel du Nord(1929)Eugène Dabit ウージェーヌ・ダビの『北ホテル』(写真)は、僅か三年の間に三笠書房、角川文庫、新潮文庫から刊行されました。訳はすべて岩田豊雄(獅子文六)です。 マルセル・カルネ監督の映画『北ホテル』が日本で公開されたのが…

『むずかしい愛』

アンソロジーというと、ついついホラーやSF、ミステリーを思い浮かべてしまいます。しかし、それが主流かといわれると何ともいえません。 恋愛小説は、僕が最も苦手とするジャンルなので、余りかかわってきませんでしたが、ひょっとするとそちらの方が読者…

『教授の家』ウィラ・キャザー

The Professor's House(1925)Willa Cather 絶版の本の感想文を書いていると、「この本は復刊されそうだな」とか「この作家は再評価されるかも」なんて思うときがあり、その予感は結構当たります。 ウィラ・キャザーの『おお開拓者よ!』の感想を書いたのは…

『残虐行為展覧会』J・G・バラード

The Atrocity Exhibition(1970)J. G. Ballard 一九六〇年代、ニューウェーブと呼ばれる新しいSF小説が生まれました。その代表的な存在がJ・G・バラードです。 彼によると、それまでのSFは狭く、制約された領域で、宇宙や未来を舞台にした単調な形式…

『皇帝に捧げる乳歯』フリッツ・フォン・ヘルツマノヴスキィ=オルランド

Der Gaulschreck im Rosennetz(1927)Fritz von Herzmanovsky-Orlando フリッツ・フォン・ヘルツマノヴスキィ=オルランドは生前、無名で、唯一刊行された小説が『皇帝に捧げる乳歯』(写真)です。 原題は「薔薇の網目にからめとられた駑馬のお化け」という…

『わが夢の女』マッシモ・ボンテンペッリ

Massimo Bontempelli ちくま文庫のマッシモ・ボンテンペッリ『わが夢の女』(写真)は復刊です。 最も古い版は、一九四一年の『我が夢の女』(河出書房)で、岩崎純孝、柏熊達生、下位英一の共訳となっています。その後、「世界ユーモア文学全集」5巻に入り…

『月で発見された遺書』ハーマン・ウォーク

The "Lomokome" Papers(1956)Herman Wouk『月で発見された遺書』(写真)は、たった二冊だけ刊行された「創樹ファンタジー」の一冊です。 ちなみに、もう一冊は、チャールズ・G・フィニーの『ラーオ博士のサーカス』です。両者には特に共通点がなく、この…

『トロイメライ』チャールズ・ボーモント

Charles Beaumont テレビドラマ『ミステリー・ゾーン』(The Twilight Zone)の脚本を数多く書き、レイ・ブラッドベリに「自分に最も近い作家」として名前を挙げられたチャールズ・ボーモントは、一九六七年に三十八歳の若さで亡くなりました。 そのせいか、…

『リラの門』ルネ・ファレ

La Grande Ceinture(1956)René Fallet ルネ・クレール監督の映画『リラの門』(Porte des Lilas)の原作です。 小説の原題は「グランドサンチュール(パリの郊外を走るフランス国鉄の大環状線)」という意味ですが、翻訳された際は既に映画化されていたた…

『目覚め』ケイト・ショパン

The Awakening(1899)Kate Chopin ケイト・ショパンは、フランス貴族の血を引くセントルイスのクレオールです。六人の子を抱えたまま若くして未亡人となった彼女は、収入にもなり、心の癒やしにもなる小説の執筆を始めます。 短編小説でデビューしたショパ…

『10月3日の目撃者』アヴラム・デイヴィッドスン

Or All the Seas with Oysters(1962)Avram Davidson アヴラム・デイヴィッドスンの長編は、エラリー・クイーンの代筆を除くと一作しか翻訳されていません。世間の評価も「短編の傑作をいくつも書いているが、長編は全く売れなかった作家」という感じではな…

『唇からナイフ』『クウェート大作戦』ピーター・オドンネル

Modesty Blaise(1965)/Sabre-Tooth(1966)Peter O'Donnell ピーター・オドンネルの「モデスティ・ブレイズ」シリーズは、小説より先に漫画が刊行され、人気を博しました(作画は、ジム・ホールダウェイ。彼の死後は、エンリケ・バディア・ロメロに交代し…