読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

『西部の小説』

以前書いたとおり、古く稀少な西部小説は入手が難しい。 ヤフオクでたまに出品されても、終了間際になるとわらわらと人が集まり、あっという間に値が吊りあがってしまいます。西部小説の愛好家はそれほど多くないと思うのですけれど、一体どこに潜んでいるの…

『バリー・リンドン』ウィリアム・メイクピース・サッカレー

The Luck of Barry Lyndon(1844)William Makepeace Thackeray 産業革命の起こったヴィクトリア朝(一八三七〜一九〇一)は、イギリスの黄金時代といわれます。また、この時代は芸術が大きく花開いたことでも知られています。 文学においても、今では「文豪…

ミステリーっぽい短編小説

海外の、ミステリー作家以外が書いたミステリーっぽい短編小説を紹介しています。

『地下街の人びと』ジャック・ケルアック

The Subterraneans(1958)Jack Kerouac ジャック・ケルアックは、紛れもなくスピードスターです。 彼の特徴は、思いついたことを一気呵成に書き上げることで、そのスタイルは「即興」と呼ばれました。 出世作の『路上(オン・ザ・ロード)』は元々、紙をつ…

『裸者と死者』ノーマン・メイラー

The Naked and the Dead(1948)Norman Mailer ノーマン・メイラーの『裸者と死者』(写真)は刊行されるや否や大反響を呼び、翌年には日本でも翻訳出版されました(改造社)。 第二次世界大戦を描いたアメリカ文学としては、ジョセフ・ヘラーの『キャッチ=2…

『ウサギ料理は殺しの味』ピエール・シニアック

Femmes blafardes(1981)Pierre Siniac 以前、フランスのミステリーや暗黒小説が好きと書きましたが、英米のそれに馴染んでいる人にとっては相当ヘンテコに思えるであろう作家がいます。そのひとりがピエール・シニアックです。 変わった作風のせいか、邦訳…

『見知らぬ島への扉』ジョゼ・サラマーゴ

O Conto da Ilha Desconhecida(1997)José Saramago『見知らぬ島への扉』(写真)は、一九九八年にノーベル文学賞を受賞したジョゼ・サラマーゴが、その前年に書いた作品です(原書はポルトガル語だが、日本語版は英語からの重訳)。 サラマーゴというと、…

つながる海外文学 ―初心者におすすめする連想読書法

「これから海外文学を読んでみたいと思っているけど、何を読んでよいのか分からない」方のために「つながりで選ぶ海外文学」を紹介しています。

『白い犬』ロマン・ガリー

Chien blanc(1970)Romain Gary 僕は文庫本が大好きなので、古書店にゆくと一目散に翻訳小説の文庫コーナーを目指します。 若い頃は、サンリオSF文庫、ハヤカワ文庫、創元文庫などに探求書が多かったのですが、それらは割と簡単にみつかりました。戦前に…

『ドラキュラのライヴァルたち』『キング・コングのライヴァルたち』『フランケンシュタインのライヴァルたち』

The Rivals of Dracula: Stories from The Golden Age of Gothic Horror(1977)/The Rivals of King Kong: A Rampage of Beasts(1978)/The Rivals of Frankenstein: A Gallery of Monsters(1977)Michel Parry ミシェル・パリー(※1)はホラー小説のア…

『イヴの物語』ペネロピ・ファーマー

Eve: Her Story(1988)Penelope Farmer トパーズプレスの「シリーズ百年の物語」は六冊しか刊行されませんでした。 ラインナップをみると、ミステリー、スリラー、SF、ファンタジーなので、ハヤカワ文庫や創元文庫に近い線を狙ったのかも知れません。実際…

『キラー・オン・ザ・ロード』ジェイムズ・エルロイ

Killer on the Road(originally published as "Silent Terror")(1986)James Ellroy ジェイムズ・エルロイの『キラー・オン・ザ・ロード』(写真)は、「ロイド・ホプキンス」三部作と「LA」四部作の間に出版されたノンシリーズの長編です。 エルロイの…

『スクリーン』バリー・N・マルツバーグ

Screen(1968)Barry N. Malzberg 以前、『決戦! プローズ・ボウル』を取り上げたときは、バリー・N・マルツバーグについてほとんど知識がなく、SF作家であることくらいしか知らなかったのですが(※1)、その後、ちょっと変な本を入手したので紹介した…

『名前のない通り』マルセル・エイメ

La Rue sans nom(1930)Marcel Aymé マルセル・エイメの『名前のない通り/小さな工場』(写真)には、長編小説『名前のない通り』と短編小説「小さな工場」が収録されています。 エイメは我が国において、短編小説(連作短編を含む)と戯曲が主に紹介され…

『ハロウィーンがやってきた』レイ・ブラッドベリ

The Halloween Tree(1972)Ray Bradbury 意外なことに『ハロウィーンがやってきた』(写真)は、レイ・ブラッドベリが初めて書いた児童向けの長編小説だそうです。 といっても、ブラッドベリは『たんぽぽのお酒』や『何かが道をやってくる』といった作品で…

『おっぱいとトラクター』マリーナ・レヴィツカ

A Short History of Tractors in Ukrainian(2005)Marina Lewycka マリーナ・レヴィツカの処女作『おっぱいとトラクター』(写真)は、ボランジェ・エブリマン・ウッドハウス賞やウェイバートン・グッドリードアワードを受賞しています。 ウッドハウス賞を…

『ピッチサイドの男』トーマス・ブルスィヒ

Leben bis Männer(2001)Thomas Brussig トーマス・ブルスィヒはドイツ民主共和国(東ドイツ)出身の作家です。 ベルリンの壁崩壊前後の東ドイツをテーマにすることが多いものの、アンナ・ゼーガースの『第七の十字架』などと異なり、ライトな作風が特徴で…

『月は地獄だ!』ジョン・W・キャンベル

The Moon is Hell!(1950)John W. Campbell ジョン・W・キャンベルはSF作家にして、SF誌の編集長でもあります。実作よりも編集の方で活躍したとのことで、日本でいうと福島正実みたいな感じでしょうか。 最も有名な作品は、映画『遊星よりの物体X』の…

『女になりたい』リタ・メイ・ブラウン

Rubyfruit Jungle(1973)Rita Mae Brown リタ・メイ・ブラウン(※1)は、フェミニズム作家で、公民権運動やLGBTの社会運動にもかかわってきました。テニス選手のマルチナ・ナブラチロワのかつての恋人、ボブ・ディランの「Rita May」(※2)のモデルと…

『日曜日は埋葬しない』フレッド・カサック

On n'enterre pas le dimanche(1958)Fred Kassak ミステリー作家の書いた、いわゆる普通のミステリー小説を扱うのは、フレドリック・ブラウンの『不思議な国の殺人』以来、何と二年ぶりです。 感想を書いていないだけでミステリーも読んではいるものの、ほ…

『ラブストーリー、アメリカン』

Love is Strange: Stories of Postmodern Romance(1994)Joel Rose, Catherine Texier『ラブストーリー、アメリカン』(写真)は、ジョエル・ローズとキャサリン・テクシエが編んだ恋愛アンソロジーです。 とはいえ、甘く切ない短編小説が読みたい方には全…

『魚が出てきた日』ケイ・シセリス

The Day the Fish Came Out(1967)Καίη Τσιτσέλη『魚が出てきた日』(写真)は、『その男ゾルバ』などで知られるギリシャの映画監督マイケル・カコヤニスが脚本・監督した作品で、本書はそれをケイ・シセリスがノベライズしたものです。 シセリスは両親がギ…

『黒い黙示録』カール・ジャコビ

Revelations in Black(1947)Carl Richard Jacobi カール・リチャード・ジャコビ(※)は寡作のせいか、日本では単著がひとつしか出ていません。その貴重な一冊が『黒い黙示録』(写真)です。 短編を量産しないタイプの作家(例えば、スタンリイ・エリン)…

『歯とスパイ』ジョルジョ・プレスブルゲル

Denti e spie(1993)Giorgio Pressburger ジョルジョ・プレスブルゲルはハンガリー出身なので、本名はPressburger Györgyと、姓が先になります。 彼はハンガリー動乱(一九五六年)の際、イタリアに亡命します。ジョルジョは双子で、最初のうちは兄弟のニコ…

『悪魔の収穫祭』トマス・トライオン

Harvest Home(1973)Tom Tryon ホラー小説はほとんど読まないので、偉そうなことはいえませんが、トマス・トライオンの『悪魔の収穫祭』(写真)は伝説級の傑作だと思います。 これが書かれたのは一九七三年。スティーブン・キングが『キャリー』でデビュー…

『おしりに口づけを』エペリ・ハイオファ

Kisses in the Nederends(1995)Epeli Hauʻofa エペリ・ハイオファはトンガ人の宣教師の息子としてパプアニューギニアで生まれました。彼は、トンガやフィジーの大学で社会学を教える傍ら小説を書きましたが、作品数は多くありません(フィクションより学術…

『アリスの教母さま』『アーモンドの樹』『まぼろしの顔』ウォルター・デ・ラ・メア

Walter de la Mare 詩人であり児童文学者でもあるウォルター・デ・ラ・メアの童話や絵本は、幻想的な作風のためか大人にも人気があります。 岩波少年文庫や福音館文庫といった児童文庫から刊行されているデ・ラ・メアはロングセラーなので、今でも安価で購入…

『タバコ・ロード』アースキン・コールドウェル

Tobacco Road(1932)Erskine Caldwell アースキン・コールドウェルは第二次世界大戦前に人気のあった作家で、戦後は影が薄くなってしまいました。ノーベル賞を受賞し、今なお読まれているウィリアム・フォークナーやジョン・スタインベックなどと比較すると…

『詳注版 月世界旅行』ジュール・ヴェルヌ、ウォルター・ジェイムズ・ミラー

The Annotated Jules Verne: From the Earth to the Moon(1978)Jules Verne, Walter James Miller SFの父ジュール・ヴェルヌの「大砲クラブ」三部作(※1)は、以下の作品から成っています。1 『De la Terre à la Lune』(1865)2 『Autour de la Lune…