読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

『責苦の庭』オクターヴ・ミルボー

Le Jardin des supplices(1899)Octave Mirbeau オクターヴ・ミルボーは、正統王朝派のジャーナリストとして活動を開始し、後にアナーキズムに傾倒し、小説や戯曲を著しました。 ブルジョア、権力者、聖職者、民衆などあらゆる者を憎んだミルボーは、過激で…

『積みすぎた箱舟』ジェラルド・ダレル

The Overloaded Ark(1953)Gerald Durrell ナチュラリストのジェラルド・ダレルは、一九四七年から一九四八年の六か月間、友人の鳥類学者ジョン・イーランドとともに英領カメルーンに滞在しました。目的のひとつはアフリカそのもの、そしてもうひとつが密林…

『飛行する少年』ディディエ・マルタン

Un Garçon en l'air(1977)Didier Martin インターネットが普及する前の話ですが、フランス文学は英米文学に比べ情報が少ないせいか、得体の知れない小説を、つい買ってしまうことがありました。このブログで取り上げたものでは『先に寝たやつ相手を起こす…

『果てしなき旅路』『血は異ならず』ゼナ・ヘンダースン

Pilgrimage: The Book of the People(1961)/The People: No Different Flesh(1966)Zenna Henderson ゼナ・ヘンダースンは寡作の上、短編しか書かなかった作家です。 代表作の「ピープル」シリーズも元々は短編で、それを単行本化する際、短編と短編をつ…

『ケツァル鳥の館』ビルヒリオ・ロドリゲス=マカル

La mansión del pájaro serpiente(1939)Virgilio Rodríguez Macal『ケツァル鳥の館』(写真)は、グアテマラの作家ビルヒリオ・ロドリゲス=マカルによる動物寓話集です。 といっても、『イソップ寓話』のような教訓談ではなく、ジャングルの生きものの生態…

『これからの一生』エミール・アジャール

La Vie devant soi(1975)Émile Ajar(Romain Gary) ロマン・ガリーはロシア生まれで、フランスに帰化した作家・映画監督です。映画ファンにとっては、ジーン・セバーグの夫といった方が分かりやすいかも知れません。 彼は一九五六年に『自由の大地』で、…

『ちょっと面白い話』『また・ちょっと面白い話』マーク・トウェイン

Mark Twain マーク・トウェインは、小説やルポルタージュのほかに、数多くのアフォリズムや小話を書いたり喋ったり(講演)しています。『ちょっと面白い話』と『また・ちょっと面白い話』(写真)は、トウェインの著作や、彼について書かれた本から、面白い…

『最後の晩餐の作り方』ジョン・ランチェスター

The Debt to Pleasure(1996)John Lanchester 英国の新聞「オブザーバー」でレストラン批評などの記事を書いていたジョン・ランチェスターの処女長編が『最後の晩餐の作り方』(写真)です。 社会経験が豊富な新人作家の処女作は、内容よりも技巧で勝負する…

『ストーリーナンバー』ウージェーヌ・イヨネスコ

Conte numéro: Pour enfants de moins de trois ans(1969, 1970, 1971, 1976)Eugène Ionesco ウージェーヌ・イヨネスコは過去に、小説(『孤独な男』)と戯曲(『授業/犀』)を取り上げたので、今回は絵本を紹介します。『ストーリーナンバー』(写真)は…

ミステリーっぽい短編小説

海外の、ミステリー作家以外が書いたミステリーっぽい短編小説を紹介しています。

つながる海外文学 ―初心者におすすめする連想読書法

「これから海外文学を読んでみたいと思っているけど、何を読んでよいのか分からない」方のために「つながりで選ぶ海外文学」を紹介しています。

『ミニ・ミステリ100』

Miniature Mysteries: 100 Malicious Little Mysteries(1981)Isaac Asimov, Martin Harry Greenberg, Joseph D. Olander 前回に続いて、アイザック・アシモフ、マーティン・H・グリーンバーグ、ジョゼフ・D・オランダーの三人が編んだショートショートの…

『三分間の宇宙』『ミニミニSF傑作展』

100 Great Science Fiction Short Short Stories(1978)/Microcosmic Tales: One Hundred Wondrous Science Fiction Short-Short Stories(1980)Isaac Asimov, Martin Harry Greenberg, Joseph D. Olander 僕が中学生の頃、ショートショートがとても流行っ…

『飢ゑ』クヌート・ハムスン

Sult(1890)Knut Hamsun 二〇一九年にノーベル文学賞を受賞したペーター・ハントケが、ジェノサイドの罪に問われたセルビアの元大統領スロボダン・ミロシェヴィッチの擁護者であるとして非難されました。 クヌート・ハムスンも一九二〇年にノーベル文学賞を…

海外文学におけるハゲ

注:二〇一九年九月二十七日に書いた記事に、新しいもの(NEWマーク付)を随時追加しています。そのたびに日付を更新します。 人生において、死、性、病、恋愛、人間関係と同じくらい悩ましい問題であるにもかかわらず、文学は「ハゲ」をきちんと扱ってこな…

『ロアルド・ダールの鉄道安全読本』ロアルド・ダール

Roald Dahl's Guide to Railway Safety(1991)Roald Dahl 大人の読者は意外に思われるかも知れませんが、ロアルド・ダールは質・量ともに、紛う方なき「児童文学作家」です(正確にいうと、四十歳代半ばから児童文学作家になった)。 日本でも、評論社の「…

『飛ぶのが怖い』エリカ・ジョング

Fear of Flying(1973)Erica Jong エリカ・ジョングの『飛ぶのが怖い』(写真)は、一九七〇年代のベストセラーです。 名前は知っていても、内容については詳しくなく、「女性が書いた性愛小説」「ウーマンリブや女性解放運動が盛んだった時代を象徴する小…

『わたしを見かけませんでしたか?』コーリイ・フォード

Has Anybody Seen Me Lately?(1958)Corey Ford『ユーモア・スケッチ傑作展』に収録された作家は、単著がほとんど翻訳されていないのですが、コーリイ・フォードは一冊だけ翻訳書が存在します。それが『わたしを見かけませんでしたか?』(写真)です(ただ…

『カルテット』ジーン・リース

Postures(1928, released as Quartet 1929)Jean Rhys「異色作家短篇集」という叢書がありますが、ジーン・リースほど「異色」という言葉が似合う作家はいないかも知れません。 最初に読んだのは岩波文庫の『20世紀イギリス短篇選』下巻の巻頭に掲載されて…

『狩人の夜』デイヴィス・グラッブ

The Night of the Hunter(1953)Davis Grubb デイヴィス・グラッブは、作品数が少なく、取り立てて特徴のある作品を書いたわけでもありません。そのため、本来であれば死後は人々の記憶から消えてしまうような作家だと思います。 そうならなかったのは、処…

『ゴロヴリヨフ家の人々』ニコライ・シチェードリン

Господа Головлёвы(1875-1880)Никола́й Щедрин ロシア人の独特なセンスはほかの国の人には理解しにくいため、インターネット上でよくネタにされます。当然ながら、ヘンテコさは文学にも表れています。 ロシア文学というと、フョードル・ドストエフスキーや…

『壜づめの女房』

早川書房の「異色作家短篇集」は、一九六〇年から一九六五年まで三期に分けて十八冊が刊行されました。十七巻までが個人の短編集で、最終巻(※1)の『壜づめの女房』(写真)のみがアンソロジーです。 この叢書は、目の写真が大きく印刷された函と、期ごと…

『モンスター誕生』リチャード・マシスン

Born of Man and Woman(1954)Richard Matheson 以前、リチャード・マシスンの『奇術師の密室』の感想を書きました。 これは晩年の長編だったので、今回は逆に処女短編集である『モンスター誕生』を取り上げることにします。 マシスンは何でも器用にこなし…

『大平原』アーネスト・ヘイコックス

Trouble Shooter(1936)Ernest Haycox 新鋭社ダイヤモンドブックスの「西部小説シリーズ」は、一九五七年に刊行が始まったウエスタン小説の叢書です。 ところが、日本におけるウエスタン小説の不人気故か、誠文堂新光社の「マンモス・ウエスタン」同様、た…

『真夜中の子供たち』サルマン・ラシュディ

Midnight's Children(1981)Salman Rushdie サルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち』(写真)は「ブッカー賞のなかのブッカー賞(Booker of Bookers)」に選ばれた名作にもかかわらず、日本ではほとんど評判にならず、文庫化もされず、現在、品切れ中で…

『この世の王国』アレホ・カルペンティエル

El reino de este mundo(1949)Alejo Carpentier サンリオはアレホ・カルペンティエルがお気に入りだったのか、『バロック協奏曲』がサンリオSF文庫から、『この世の王国』(写真)がサンリオ文庫から刊行されました。『この世の王国』はサンリオより先の…

『猫橋』ヘルマン・ズーデルマン

Der Katzensteg(1890)Hermann Sudermann ヘルマン・ズーデルマンの『猫橋』は、明治三〇年頃に戸張竹風による抄訳『賣国奴』として日本に初めて紹介されました。 田山花袋も『カッツェンステッヒ』の邦題で翻訳したそうですが、まとまった形では発表されて…

『魔女も恋をする』『たんぽぽ娘』『見えない友だち34人+1』

僕が中学生の頃、第何次目かのSFブームが起こりました。それに便乗したのか、コバルト文庫(当時は「集英社文庫コバルトシリーズ」)でも海外のSFやホラーのアンソロジーが盛んに刊行されました。 そのなかで印象に残っているのは、やはり「海外ロマンチ…

『縛り首の丘』エッサ・デ・ケイロース

Eça de Queiroz ホセ・マリア・デ・エッサ・デ・ケイロース(José Maria de Eça de Queiroz)は、ポルトガルの70年代世代もしくはコインブラ世代と呼ばれるグループの代表的作家です。ただし、専業ではなく、弁護士や外交官の傍ら小説や紀行、評論文などを執…