読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

『アメリカ鉄仮面』アルジス・バドリス

Who?(1958)Algis Budrys 東プロイセン生まれのリトアニア人で、家族とともにアメリカに亡命したアルジス・バドリス(※)。 邦訳には恵まれておらず、評価の高い『無頼の月』も一九六一年に「SFマガジン」で連載されたきり、単行本になっていません。 も…

『ヂャック』アルフォンス・ドーデ

Jack(1876)Alphonse Daudet アルフォンス・ドーデの『ヂャック』(写真)を読むきっかけとなったのは森茉莉でした。 茉莉の息子の山田𣝣(じゃく)と同じ名前のせいか、彼女のエッセイに度々登場します。例えば……。「息子の家から公然と移動して来たドオデ…

『ベル・カント』アン・パチェット

Bel Canto(2001)Ann Patchett『ベル・カント』(写真)はアン・パチェットの代表作です。オレンジ賞やペン/フォークナー賞を受賞しており、二〇一八年には映画化もされています。 しかし、翻訳されたパチェットの長編はほかに『密林の夢』しかなく、映画…

『悪魔なんかこわくない』マンリー・ウェイド・ウェルマン

Who Fears the Devil?(1963)Manly Wade Wellman アーカムハウス(Arkham House)とは、故人となったH・P・ラヴクラフトの小説を出版するために、オーガスト・ダーレスとドナルド・ワンドレイが作った会社です(アーカムは、クトゥルフ神話に登場する都市…

『魔女たちの饗宴』タチヤーナ・トルスタヤ、リュドミラ・ペトルシェフスカヤほか

ロシアの女流作家というとリュドミラ・ウリツカヤを思い浮かべる方が多いと思いますが、「ほかに誰の作品を読んだことがありますか?」と問われたら、「むむむ」と唸ってしまうかも知れません。研究者ならいざ知らず、一般の読者にはほとんど知られていない…

ミステリーっぽい短編小説

海外の、ミステリー作家以外が書いたミステリーっぽい短編小説を紹介しています。

つながる海外文学 ―初心者におすすめする連想読書法

「これから海外文学を読んでみたいと思っているけど、何を読んでよいのか分からない」方のために「つながりで選ぶ海外文学」を紹介しています。

『赤毛のサウスポー』『赤毛のサウスポー〈PART2〉 ―二年目のジンクス』ポール・R・ロスワイラー

The Sensuous Southpaw(1976)/The Sensuous Southpaw: Part 2(1978)Paul Roger Rothweiler メジャーリーグベースボール(MLB)初の女性選手の活躍を描いたポール・ロジャー・ロスワイラーの『赤毛のサウスポー』(写真)が出版された一九七六年は、プ…

『愚者たち』ジャブロ・ンデベレ

Fools and Other Stories(1983)Njabulo Ndebele ジャブロ・ンデベレの『愚者たち』(写真)は、一九八四年に「野間アフリカ出版賞」を受賞しました。この賞はアフリカ文壇への登竜門としての役割を担っていましたが、ニ〇〇九年を最後に主催されていません…

『果樹園のセレナーデ』L・M・モンゴメリ

Kilmeny of the Orchard(1910)Lucy Maud Montgomery どんなに好きな作品(あるいは作家)であろうと、誰もが知っているものを、このブログでは取り上げないようにしています。 別に格好をつけているわけではありません。僕のブログは定期読者がほとんどい…

『泰平ヨンの航星日記』スタニスワフ・レム

Dzienniki gwiazdowe(1957)/Kongres futurologiczny(1971)/Wizja lokalna(1982)Stanisław Lem スタニスワフ・レムは、『泰平ヨンの航星日記』(写真)に、刊行後もしつこく手を加え続けました。何と二十一世紀になっても、まだいじくっていたそうです…

『夢織り女』ジェイン・ヨーレン

Dream Weaver(1979)/The Moon Ribbon And Other Tales(1976)/The Hundredth Dove and Other Tales(1977)Jane Yolen ハヤカワ文庫といえば、若い頃はSFやHMよりも寧ろFTのお世話になりました。 創刊されたのが一九七九年で、古い文庫(ロード・ダ…

『シンドバッドの海へ』ティム・セヴェリン

The Sindbad Voyage(1983)Tim Severin ジョン・バースの『船乗りサムボディ最後の船旅』の主人公サイモン・ウィリアム・ベーラーは、船に同乗させて欲しいとティム・セヴェリンに交渉するものの断られ、やむなく自ら船を出すことになります。その結果、『…

『船乗りサムボディ最後の船旅』ジョン・バース

The Last Voyage of Somebody the Sailor(1991)John Barth ジョン・バースは、一流のストーリーテラーで、ボリュームたっぷりの長編が多いため、一度その世界に入り込むと長く楽しめ、読後もしばらく尾を引きます。一方で、前衛的な技法を用いるため、読者…

『火の娘たち』ジェラール・ド・ネルヴァル

Les Filles du feu(1854)Gérard de Nerval ジェラール・ド・ネルヴァルの『火の娘たち』(写真)は、彼が自殺する前年に刊行された最後の書籍です。また、このブログでは珍しく、誰もが知っている古典でもあります。 といって、長編でも、同一のテーマに沿…

『魔術師が多すぎる』ランドル・ギャレット

Too Many Magicians(1966)Randall Garrett ランドル・ギャレットの「ダーシー卿(Lord Darcy)」シリーズは、科学の代わりに魔術が発達したパラレルワールドを舞台にしたSFミステリーです。 長編が一編、短編が十編書かれ、日本では番外編の「The Spell …

『死んだふり』ダン・ゴードン

Just Play Dead(1997)Dan Gordon 映画『ワイアット・アープ』『告発』『ザ・ハリケーン』『アサインメント』などの脚本家として知られるダン・ゴードンの処女小説が『死んだふり』(写真)です。「中編程度のボリューム」「プレミアのついていない安価な文…

『レクトロ物語』ライナー・チムニク

Geschichten vom Lektro(1962)/Neue Geschichten vom Lektro(1964)Reiner Zimnik 美術学校出身のライナー・チムニクは「イラストも自分で描く児童文学者」というより「文章も書く画家」といった方がよいかも知れません。実際、文よりも絵の比率の方が高…

二択でみつける一万円分の海外文学

いくつかの設問に答えることで、あなたに合った一万円分の海外文学がみつかります

『黒の召喚者』ブライアン・ラムレイ

The Caller of the Black(1971)Brian Lumley ブライアン・ラムレイは、H・P・ラヴクラフトが亡くなった年(九か月後)に生まれた作家です。 生まれ変わりかどうかは知りませんが、彼もクトゥルフ神話に魅せられ、後に書き手となったラヴクラフティアンの…

『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』アルジャーノン・ブラックウッド

John Silence, Physician Extraordinary(1908)Algernon Blackwood 前回の『幽霊狩人カーナッキの事件簿』に続き、オカルト探偵シリーズである、アルジャーノン・ブラックウッドの『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』(写真)を取り上げます(※)。 カ…

『幽霊狩人カーナッキの事件簿』ウィリアム・ホープ・ホジスン

Carnacki, The Ghost-Finder(1913)William Hope Hodgson オカルト探偵といえば、ブラム・ストーカーのエイブラハム・ヴァン・ヘルシング、シェリダン・レ・ファニュのマルチン・ヘッセリウス、E&H・ヘロンのフラクスマン・ロウ、アルジャーノン・ブラッ…

『トラストDE ―ヨーロッパ滅亡史』イリヤ・エレンブルグ

Трест Д.Е.: История гибели Европы(1923)Илья́ Григо́рьевич Эренбу́рг イリヤ・グリゴーリエヴィチ・エレンブルグの『トラストDE』(写真)は、日本において、一体、何回出版されたことでしょう。 一九二九年の新潮社『世界文学全集』をはじめとして、…

『道のまん中のウェディングケーキ』スチュアート・ダイベック、アン・ビーティほか

The Wedding Cake in the Middle of the Road: 23 Variations on a Theme(1992)Susan Stamberg, George Garrett このブログでアンソロジーをほとんど扱ってこなかったのには、以下のような理由があります。「好きな作家と嫌いな作家の差が激しいので、単著…

『コスミック・レイプ』シオドア・スタージョン

The Cosmic Rape(1958)Theodore Sturgeon SFファンは絶賛するのにもかかわらず、「何のこっちゃ分からない」と首を傾げたくなる作家がいます(グレッグ・イーガンなどはSFファンにもよく分からないらしいから除外する。また、僕の知識はン十年前で止ま…

『魚雷をつぶせ』ジョルジュ・ランジュラン

Torpillez la torpille(1964)George Langelaan 早川書房の叢書「異色作家短篇集」で個人短編集が刊行された十七人の作家の、それ以外の書籍を取り上げようと思い立ちましたが、最も選択肢が少ないのがジョルジュ・ランジュランです(※)。 何しろ『蠅』以…

『夜の冒険者たち』ジャック・フィニイ

The Night People(1977)Jack Finney 外国語をカナ書きする際、最大の問題は、表記にばらつきが出てしまうことです。 厄介なのが固有名詞で、このブログの場合、特に人名の表記に悩まされています。「統一のため、書籍に記されている著者名とは異なる表記を…

『盲目の梟』サーデグ・ヘダーヤト

بوف کور(1937)صادق هدایت オマル・ハイヤームの『ルバイヤート』の編纂でも知られるサーデグ・ヘダーヤトは、現代ペルシア文学における最も重要な作家です。「文学イコール韻文」だったペルシアにおいて、散文を普及させた功績が讃えられています。 日本に…

『そうはいっても飛ぶのはやさしい』イヴァン・ヴィスコチル/カリンティ・フリジェシュ

Vždyť přece létat je snadné(1963)Ivan Vyskočil / Karinthy Frigyes『そうはいっても飛ぶのはやさしい』は、生まれ育った国も世代も異なるふたりの作家を抱き合わせた、非常に珍しい本です。 併録は、ボリュームのある文学全集などではよくありますが、…