読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

海外文学におけるハゲ

注:二〇一九年九月二十七日に書いた記事に、新しいもの(NEWマーク付)を随時追加しています。そのたびに日付を更新します。 人生において、死、性、病、恋愛、人間関係と同じくらい悩ましい問題であるにもかかわらず、文学は「ハゲ」をきちんと扱ってこな…

『トコ博士の性実験』マルコ・ヴァッシー

Mind Blower(1972)Marco Vassi マルコ・ヴァッシーは、ポルノグラフィを中心に執筆した作家です。といっても、単なる官能小説家ではなく、実験的な作品が多いため、ヘンリー・ミラーと比較されることが多い……と書くと、不吉な予感がする方もいらっしゃるで…

『夢小説』アルトゥル・シュニッツラー

Traumnovelle(1926)Arthur Schnitzler 森鷗外は、同じ年齢で、ともに医師でもあるオーストリアの作家アルトゥル・シュニッツラーに共感し、以下の七編を翻訳しています。 「短劔を持ちたる女」 「アンドレアス・タアマイエルが遺書」 「猛者」 「耶蘇降誕…

『コブラ』セベロ・サルドゥイ

Cobra(1972)Severo Sarduy キューバで医学を学んでいたセベロ・サルドゥイは、パリに留学した際、雑誌「テル・ケル」を制作していた知識人たちと出会いました。そして、一年後に奨学金が切れてもキューバに帰らず、そのままパリに残りました。 フィデル・…

『わが心の子らよ』ガブリエル・ロワ

Ces enfants de ma vie(1977)Gabrielle Roy 移民文学というジャンルのなかで、子ども(たち)を主人公にした作品は一際輝いてみえます。 主役が子どもなので、必然的に移民二世以降の物語となります。多くは作者自身をモデルにしており、貧しく、虐げられ…

『真夜中の黒ミサ』『悪夢の化身』『13人の鬼あそび』『神の遺書』

A Century of Horror Stories(1935)Dennis Wheatley「恐怖の一世紀」は、作家のデニス・ホイートリーが、一九三五年までの約百年間(※)に書かれたホラーの短編のなかから五十二編を選んだアンソロジーです。 原書から数編割愛して翻訳するなど中途半端な…

『太った女、やせた女』メアリー・ゲイツキル

Two Girls, Fat and Thin(1991)Mary Gaitskill メアリー・ゲイツキルは少女の頃、「将来は娼婦になる」と宣言して両親を驚かせた(※1)とか。その後、娼婦ではなくストリッパーになり、それ以外にも麻薬の売買、暴力事件、高校退学、家出、精神病院に入院…

『地下組織ナーダ』ジャン=パトリック・マンシェット

Nada(1972)Jean-Patrick Manchette 以前も書きましたが、暗黒小説(ノワール小説)とは、アメリカの犯罪小説(ホレス・マッコイやジェイムズ・M・ケインなど)の翻訳をきっかけに生まれたフランスの犯罪小説を指します。 広義では、フランス以外の国の犯…

『完全版ピーナッツ全集』チャールズ・M・シュルツ

The Complete Peanuts(2004-2016)Charles M. Schulz 二〇二〇年十一月の配本で、チャールズ・M・シュルツの『完全版ピーナッツ全集』全二十五巻+別巻が完結しました。 このブログでは絶版や非売品など普通の書店で入手できない本の感想を書いており、本…

『ボロゴーヴはミムジイ』『御先祖様はアトランティス人』『世界はぼくのもの』ヘンリー・カットナー

Henry Kuttner(a.k.a. Lewis Padgett) ヘンリー・カットナー(※1)は二十近い筆名を用いたことで知られています。そのせいで、知らない作家が登場すると「またカットナーの変名か」と思われたそうです。 筆名のなかには妻であるC・L・ムーアとの合作ペ…

つながる海外文学 ―初心者におすすめする連想読書法

「これから海外文学を読んでみたいと思っているけど、何を読んでよいのか分からない」方のために「つながりで選ぶ海外文学」を紹介しています。

『審判』バリー・コリンズ

Judgement(1974)Barry Collins いきなりですが、物語のさわりを記します。 第二次世界大戦中、ドイツ軍は、南ポーランドにある修道院の地下室に、ロシア軍の捕虜七人を素っ裸で閉じ込め、水も食料も与えず置き去りにします。 二か月後、ふたりの兵士が生き…

『毒物』フランソワーズ・サガン

Toxique(1964)Françoise Sagan フランソワーズ・サガンは、二十一歳のとき、自ら運転していた車で事故を起こし、重傷を負います。何とか一命は取り留めたものの、痛み止めに処方された875(パルフィウム)と呼ばれるモルヒネの代用薬の中毒に悩まされま…

『ぬいぐるみさんとの暮らし方』グレン・ネイプ

The Care and Feeding of Stuffed Animals(1983)Glen Knape 今の若い人は信じられないかも知れませんが、僕の子どもの頃は「男が少女漫画や少女向け小説を読むのは恥ずかしいことだ」という風潮がありました。 そのため、小学生のときから付録つきの少女漫…

『黄金の谷』ジャック・シェーファー

The Pioneers(1954)Jack Schaefer 以前の記事で、『新鋭社ダイヤモンドブックスの「西部小説シリーズ」(※1)は十四巻まで予告されたものの、確認できるのは六冊のみ』と書きましたが、最近になって七冊目を発見しました。 恐らく最後の配本だったであろ…

ミステリーっぽい短編小説

海外の、ミステリー作家以外が書いたミステリーっぽい短編小説を紹介しています。

『世界滑稽名作集』

『世界滑稽名作集』(写真)は、ユーモア作家の東健而が編訳した滑稽小説のアンソロジーです。 五人の作家を選んでいますが、ジーン・ウェブスター、ドナルド・オグデン・ステュアート、P・G・ウッドハウスの収録作に関してはほかにも翻訳があるので、この…

『時の矢 ―あるいは罪の性質』マーティン・エイミス

Time's Arrow: or The Nature of the Offence(1991)Martin Amis マーティン・エイミスは、『ラッキー・ジム』のキングズリー・エイミスの息子です。 最も有名な作品はロンドン三部作の『Money』『London Fields』『The Information』ですが、いずれも翻訳…

『6人の容疑者』ヴィカス・スワラップ

Six Suspects(2008)विकास स्वरुप ヴィカス・スワラップの『6人の容疑者』(写真)は、武田ランダムハウスジャパンから刊行され、二年後に文庫化されました(RHブックス・プラス)。 この出版社は、元々ランダムハウス講談社という社名でしたが、両社の…

『ラサリーリョ・デ・トルメスの新しい遍歴』カミロ・ホセ・セラ

Nuevas andanzas y desventuras de Lazarillo de Tormes(1944)Camilo José Cela 十六世紀半ばのスペインで、作者不詳の小説が突如ベストセラーになりました。それが『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』(1554)です。 文庫本にして百頁強という短い物語…

『海ふかく』ウィリアム・ホープ・ホジスン

Deep Waters(1967)William Hope Hodgson『海ふかく』(写真)は、アーカムハウスから刊行されたウィリアム・ホープ・ホジスンの短編集です。 ホジスンは第一次世界大戦で戦死したので、死後五十年後の出版ということになります。一時は忘れられた作家にな…

『夜の森』ジューナ・バーンズ

Nightwood(1936)Djuna Barnes 一九二〇年代のパリは狂騒の時代(Les Années Folles)と呼ばれ、各国から様々なジャンルの芸術家が集まりました。 文学者ではアーネスト・ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルドの名が真っ先にあがりますが、女…

『恋を覗く少年』L・P・ハートリー

The Go-Between(1953)L. P. Hartley L・P・ハートリーは、近年の日本において「ポドロ島」のイメージが強いため、怪奇小説家だと思っている方が多いかも知れません。けれども、一般的には『恋を覗く少年(恋)』(写真)(※1)で知られる作家です。これ…

『マルタン君物語』マルセル・エイメ

Derrière chez Martin(1938)Marcel Aymé マルセル・エイメの『マルタン君物語』は、原書が刊行された翌年(昭和十四年)に早くも『人生斜斷記』(写真)の邦題で翻訳されています(鈴木松子訳)。 江口清訳の方は、筑摩書房の「世界ユーモア文学全集」「世…

『やわらかい機械』ウィリアム・S・バロウズ

The Soft Machine(1961)William S. Burroughs ウィリアム・S・バロウズの『ソフトマシーン』といえば、『爆発した切符』『ノヴァ急報』と続く「ノヴァ三部作」の第一作であり、カットアップ、フォールドインといった技法を有名にした(バロウズのオリジナ…

『黄金の仔牛』イリフ、ペトロフ

Золотой телёнок(1931)Ильф и Петров イリフ、ペトロフの『黄金の仔牛』(※1)(写真)は、『十二の椅子』で孤軍奮闘したにもかかわらず、あっさりと殺されてしまったオスタップ・ベンデルを蘇らせて、再び活躍させた作品です。 ベンデルは人気キャラクタ…

『十二の椅子』イリフ、ペトロフ

Двенадцать стульев(1928)Ильф и Петров イリフ、ペトロフは、ロシアのユーモア作家。変な表記で分かるとおり、イリヤ・イリフ(Иья Ильф)とエウゲニー・ペトロフ(Евгений Петров)の共同ペンネームです。 原書をみると著者名は「Ильф и Петров」「Ильф …

『バットマンの冒険』

The Further Adventures of Batman(1989)Martin H. Greenberg 一九三九年に誕生したバットマン(※)の五十周年を記念して企画された『バットマンの冒険』(写真)は、依頼型のアンソロジーです。 編集者、アンソロジストのマーティン・H・グリーンバーグ…

『ヴィオルヌの犯罪』マルグリット・デュラス

Les Viaducs de la Seine-et-Oise(1959)/L'Amante anglaise(1967)/L'Amante anglaise(1968)Marguerite Duras マルグリット・デュラスの『ヴィオルヌの犯罪』(写真)には、モデルとなった殺人事件があります。一九四九年に、アメリー・ラビュー(Améli…