読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

イタリア

『わが夢の女』マッシモ・ボンテンペッリ

Massimo Bontempelli ちくま文庫のマッシモ・ボンテンペッリ『わが夢の女』(写真)は復刊です。 最も古い版は、一九四一年の『我が夢の女』(河出書房)で、岩崎純孝、柏熊達生、下位英一の共訳となっています。その後、「世界ユーモア文学全集」5巻に入り…

『ある愛』ディーノ・ブッツァーティ

Un amore(1963)Dino Buzzati ディーノ・ブッツァーティは一九七二年に亡くなったイタリアの作家ですが、我が国ではいまだに新訳の短編集が刊行されています。 フランスでも人気がある一方、英語圏ではほとんど知られていないそうです。 ブッツァーティとい…

『死の勝利』ガブリエーレ・ダンヌンツィオ

Trionfo della morte(1894)Gabriele D'Annunzio 古本を実店舗で購入する際、これまでに数々の失敗をしてきました。「ダブって購入してしまった」「カバーと本体が違う本だった」「書き込みが沢山あった」「一部が切り取られていた」「全巻セットだと思った…

『歯とスパイ』ジョルジョ・プレスブルゲル

Denti e spie(1993)Giorgio Pressburger ジョルジョ・プレスブルゲルはハンガリー出身なので、本名はPressburger Györgyと、姓が先になります。 彼はハンガリー動乱(一九五六年)の際、イタリアに亡命します。ジョルジョは双子で、最初のうちは兄弟のニコ…

『おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ』アレッサンドロ・ボッファ

Sei una bestia, Viskovitz(1998)Alessandro Boffa アレッサンドロ・ボッファは、モスクワ生まれのイタリア人。ローマで育ち、大学卒業後は世界中を旅しているそうです。 大学で生物学を専攻した彼は、デビュー作の『おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ…

『オルゴン・ボックス』パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ

Conviene far bene l'amore(1975)Pasquale Festa Campanile パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレは、処女小説『La nonna Sabella』(1957)が大変好評だったにもかかわらず、映画の世界の方が肌に合ったのか、その後、あまり小説を書きませんでした(※)…

『テスケレ』ルーチョ・チェーヴァ

Teskeré(1971)Lucio Ceva 僕は中学生の頃(一九八〇年頃)、筒井康隆が大好きで、文庫になったものはほとんど買っていました。粗方読み尽くしてしまうと、とにかく少しでも似た感じの小説はないかと、飢えた狼のような目で内外の短編集を漁りまくりました…

『眠くて死にそうな勇敢な消防士』アルベルト・モラヴィア

Storie della preistoria(1982)Alberto Moravia アルベルト・モラヴィアは、イタリア文学の巨匠だけあって、映画化された作品がとても多く、三十作ほどあるそうです。有名なところでは、ジャン=リュック・ゴダールの『軽蔑』や、ベルナルド・ベルトルッチ…

『イーダの長い夜』エルサ・モランテ

La storia(1874)Elsa Morante エルサ・モランテは「アルベルト・モラヴィアの最初の奥さん」といった方がとおりがよいかも知れません(※)。映画監督のルキノ・ヴィスコンティと三角関係だったともいわれており、それを描いたのがモラヴィアの『金曜日の別…

『陽気なドン・カミロ』『ドン・カミロ頑張る』『ドン・カミロ大いに困る』ジョヴァンニ・グァレスキ

Mondo Piccolo: Don Camillo(1948)/Mondo Piccolo: Don Camillo e il suo gregge(1953)Giovannino Guareschi 三冊なのに原題がふたつしかないのは、日本版の最初の二冊が、原書では一冊だからです。 事情は定かではありませんが、その二冊がフランス語か…

『生きていたパスカル』ルイジ・ピランデルロ

Il Fu Mattia Pascal(1904)Luigi Pirandello ルイジ・ピランデルロは、個人的にとても影響を受けた作家です(例えば『作者を探す六人の登場人場』は拙作『晩餐は「檻」のなかで』で取り上げさせてもらった)。 勿論、小説、戯曲ともに高い評価を得ています…

『前日島』ウンベルト・エーコ

L'isola del giorno prima(1994)Umberto Eco 以前、図書館を利用しない理由を述べましたが(※)、もうひとつ大きな事情があって、それは僕が余り本を読まないってこと。 僕は典型的な積読派で、本を買うのは大好きだけど、読むのが全く追いつかず、恐らく…

「異色作家短篇集」

二度目の復刊となった早川書房の「異色作家短篇集」が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです(写真)。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありまし…