読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

アメリカ

『ドン・キホーテ』キャシー・アッカー

Don Quixote: Which Was a Dream(1986)Kathy Acker 日本では本家と同じ書名になってしまい紛らわしい(※)のが、キャシー・アッカーの『ドン・キホーテ』(写真)。サブタイトルの「それは夢だった」は、邦題についているのかいないのか微妙な感じです(カ…

『ナボコフのドン・キホーテ講義』ウラジーミル・ナボコフ

Lectures on Don Quixote(1983)Vladimir Nabokov 僕が読んだ小説の数なんて高が知れています。多めに見積もっても、精々五千冊といったところでしょう。 それでこんなことを書くのは烏滸がましいのですが、もしオールタイムベストを選べといわれたら、ミゲ…

『悩める狼男たち』マイケル・シェイボン

Werewolves in Their Youth(1999)Michael Chabon ナ行の書名は、やはり少なかったです(僕の本棚では「忍法〜」「忍者〜」というタイトルが沢山ある山田風太郎が一番多そう)。お気に入りの外国文学で、絶版という条件だと、非常に限られてしまいます。『…

『キャンディ』テリー・サザーン

Candy(1958)Terry Southern「奇書」「ポルノグラフィ」つながりなら、テリー・サザーンの『キャンディ』を選ばないわけにはゆきません(前回が『マイラ』だったから、ジョン・バースの『キマイラ』も考えたが……)。大きな声ではいえませんが、僕はこの小説…

『マイラ』『マイロン』ゴア・ヴィダル

Myra Breckinridge(1967)/Myron(1974)Gore Vidal 前回と、ちょこっとだけつながりがある本を、これまでときどき選んできました。ずっと続くと連想ゲームみたいで面白いのですが、そんなルールを設けるのは辛そうなので、今のところ適当に遊んでいます。 …

『カメラ・オブスクーラ』『マグダ』『マルゴ』ウラジーミル・ナボコフ

Камера Обскура(1933)/Magda(1934)/Laughter in the Dark(1938)Владимир Набоков, Vladimir Nabokov 生涯で好きな作家を三人あげろといわれたら、三人目くらいに入ってきても全く不思議じゃないのがウラジーミル・ナボコフ(※1)。 ロシア語と英語で…

『エバ・ルーナ』『エバ・ルーナのお話』イサベル・アジェンデ

Eva Luna(1987)/Cuentos de Eva Luna(1989)Isabel Allende 今回は、イサベル・アジェンデの『エバ・ルーナ』と『エバ・ルーナのお話』(写真)を取り上げます。 この「読書感想文」では、漸くふたり目の女性です。以前も述べましたが、僕は女流作家の本…

『ファタ・モルガーナ』ウィリアム・コツウィンクル

Fata Morgana(1977)William Kotzwinkle 前回取り上げた エイモス・チュツオーラは、どの作品もよく似ていると書きました。しかし、逆に、一作ごとに異なる作風の人はいないかなと思って、ヘドロが溜まった記憶の底を浚ってみたところ、ウィリアム・コツウ…

『オズのグリンダ』L・フランク・ボーム

Glinda of Oz(1920)L. Frank Baum 怪盗パピヨンの三巻で『オズの魔法使い』に少し触れています。これは、パピヨンシリーズのモチーフである「虹」を匂わせるようにするためでした。 実をいうと、オズシリーズで虹に関係するのは、虹の娘ポリクロームくらい…

『ラグタイム』E・L・ドクトロウ

Ragtime(1975)E. L. Doctorow E・L・ドクトロウは、アメリカ文学におけるユダヤ系作家のひとりです。同じユダヤ系のフィリップ・ロスとほぼ同年代で、デビューも同時期。 日本では、前に触れたロビンズやクーヴァー同様、一時期、訳本が続けて出版されま…

『カウガール・ブルース』トム・ロビンズ

Even Cowgirls Get the Blues(1976)Tom Robbins タイミングが悪かったのか、「こいつを日本に紹介してやる!」という情熱に溢れた訳者に恵まれなかったのか、トム・ロビンズの小説は、現在たった二冊しか翻訳されていません(もう一冊は『香水ジルバ』。そ…

『ハーツォグ』ソール・ベロー

Herzog(1964)Saul Bellow 恒例(?)の夏休みの読書感想文ですが、僕の感想は中高生レベルなので、よろしければ夏休みの宿題の参考にどうぞ。 さて、宇宙人に「小説って一体、何だ。ひとつ見本をみせてくれよ」といわれたら、僕は迷わずソール・ベローを紹…

『バビロンを夢見て』リチャード・ブローティガン

Dreaming of Babylon: A Private Eye Novel 1942(1977)Richard Brautigan 妄想とか、夢想とかいうものは、まともな社会生活を営む上で余り必要のないものです。 僕もその気があって、嫌なことがあると、すぐ空想の世界に逃げ込んでしまいます。ま、何とか…

『びっくりハウスの迷子』ジョン・バース

Lost in the Funhouse(1968)John Barth 生涯で好きな作家を三人あげろといわれたら、三人目くらいに入ってきても全く不思議じゃないのがジョン・バース。 ストーリーテラーとしての才能を遺憾なく発揮した長大な物語と、明らかに読者を選ぶ実験的な手法を…

『ユニヴァーサル野球協会』ロバート・クーヴァー

The Universal Baseball Association, Inc., J. Henry Waugh, Prop.(1968)Robert Coover 今回は読書感想文ではなく、ちょっと視点をずらしたものを試してみます。 僕のホームページは、元々スポーツカードの交換を目的に開設されました。 メインはNHL(…

「異色作家短篇集」

二度目の復刊となった早川書房の「異色作家短篇集」が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです(写真)。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありまし…