Les Choses: Une histoire des années soixante(1965)/Quel petit vélo à guidon chromé au fond de la cour?(1966)Georges Perec
サイトの検索ワードをチェックすると、「比喩(隠喩、直喩、換喩、提喩)」に関する言葉をときどきみかけます(※)。そこで今回は、レトリックに興味がある方にお薦めの小説をご紹介したいと思います。
それは、ジョルジュ・ペレックの「営庭の奥にあるクロムめっきのハンドルの小さなバイクって何?」という作品。
中編くらいのボリュームなので、邦訳は『物の時代/小さなバイク』(写真)という書籍に、別の作品と一緒に収められています。
簡単にいうと、この小説は、あらゆる修辞技法を駆使して書かれた文体練習のようなもの。
一応、兵役を忌避する若者たちの物語になっていますが、それに大した意味はなく、最初から最後までひたすら修辞学を茶化しています(それによって、戦争の無意味さを訴えている、ともいえるが)。
雰囲気は、ウリポの仲間であるレーモン・クノーの『文体練習』(1947)にとても近い、というか、あれを意識して書いたのは間違いないので、比較しつつ読むのも楽しいですよ。
しかも、巻末には修辞技法の索引がついていて、それが何頁で用いられているか検索できるようになっています。読了後に、索引から該当頁に戻り、その技法を確認することで、新たな発見や驚きが見出せるでしょう。
ただし、こちらも真面目なものはほとんどありませんから、パロディとして楽しんだ方がよいかも知れません(アフリカ語法とか衒飾的言辞とか聞いたことのないものがたくさん出てくる)。
追記:二〇一三年四月、文遊社から復刊されました。
※:今は消えてしまったが、当時掲載していた比喩は以下のようなものだった。
隠喩(人生はサンドバッグだ)
直喩(社長は虎のような目で俺にクビを告げた)
換喩(おっ、ハローワークじゃないか。元気か)
提喩(パンを買う金もない)
『物の時代/小さなバイク』弓削三男訳、白水社、一九七八
→『眠る男』ジョルジュ・ペレック