読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

イングランド

『深き森は悪魔のにおい』キリル・ボンフィリオリ

Something Nasty in the Woodshed(1976)Kyril Bonfiglioli SFブームの真っ只中の一九七八年に生まれ、わずか十年足らずで姿を消したサンリオSF文庫。マニアックなラインナップがディープなSFファンに支持され、廃刊後は高額なコレクターズアイテムと…

『キホーテ神父』グレアム・グリーン

Monsignor Quixote(1982)Graham Greene『ドン・キホーテ』ほど有名になると、そのパロディ作品も、タイトルだけもじったもの、ドン・キホーテ的な人物が登場するだけのものから、本格的なものまで、世界中に腐るほどあります。 有名なところでは、ヒュー・…

『どこまで行けばお茶の時間』アンソニー・バージェス

A Long Trip to Tea Time(1976)Anthony Burgess アンソニー・バージェスは、過去に『聖ヴィーナスの夕べ』の簡単な記事を書きましたが、あれは感想でも何でもなく、「雑文」として書いたものの一部なので、今回はきちんと取り上げたいと思います。 バージ…

『宇宙人フライデー』レックス・ゴードン

No Man Friday(a.k.a. First on Mars)(1956)Rex Gordon レックス・ゴードンの『宇宙人フライデー』は、一九五八年にハヤカワ・ファンタジイ(後のハヤカワSFシリーズ)から『宇宙人フライデイ』(井上一夫訳)のタイトルで発行されました。 その後、一…

『ラッキー・ジム』キングズリー・エイミス

Lucky Jim(1954)Kingsley Amis キングズリー・エイミスは、詩人としてデビューし、「怒れる若者たち(Angry Young Men)」と呼ばれる作家たちのひとりであり、英国の風刺小説やコミックフィクションの伝統を受け継いでいて、SFやミステリーも書き、酒や…

『ガイアナとブラジルの九十二日間』イーヴリン・ウォー

Ninety-two Days: The Account of a Tropical Journey Through British Guiana and Part of Brazil(1934)Evelyn Waugh「図書館を利用しない」「新本で手に入る本を古書店で購入しない」をモットーにしている僕ですが、イーヴリン・ウォーとの出会いは、た…

『フランス軍中尉の女』ジョン・ファウルズ

The French Lieutenant's Woman(1969)John Fowles 子どもの頃、夏休みに読書感想文を提出させられましたが、嫌で嫌で仕様がありませんでした。過去形になっていますが、実は今でも好きじゃない。いろいろ理屈をつけてますけど、サイトで書評をしないのは単…

「異色作家短篇集」

二度目の復刊となった早川書房の「異色作家短篇集」が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです(写真)。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありまし…

『聖ヴィーナスの夕べ』アンソニー・バージェス

The Eve of St. Venus(1964)Anthony Burgess アンソニー・バージェスの『聖ヴィーナスの夕べ』(写真)とは、こんな話です。 結婚式の前日、花婿が練習のつもりで、庭のヴィーナス像の薬指に結婚指輪をはめる。すると、不思議なことに石像の指が曲がり、指…