読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

イングランド

『ピンチャー・マーティン』ウィリアム・ゴールディング

Pincher Martin: the Two Deaths of Christopher Martin(1956)William Golding『蝿の王』のように誰もが知っている作品があり、『我が町、ぼくを呼ぶ声』のようなゴミもあるノーベル賞作家ウィリアム・ゴールディング。 どうも過大評価されている、という…

『ジャングル・ブック』『続ジャングル・ブック』ラドヤード・キプリング

The Jungle Book(1894)/The Second Jungle Book(1895)Joseph Rudyard Kipling『ジャングル・ブック』と聞くと、ウォルト・ディズニーの遺作であるアニメーション映画を思い浮かべる人が多いと思います。幼少時の僕も、映画の絵本版で『ジャングル・ブッ…

『東方旅行記』ジョン・マンデヴィル

The Travels of Sir John Mandeville(1357)John Mandeville マルコ・ポーロの『東方見聞録』(1298)を知らない人はいないでしょうが、ジョン・マンデヴィルの『東方旅行記』(写真)(※1)となると、多くの人は「何だ、それ?」と首を傾げるかも知れませ…

『ゴルフ人生』『ゴルきちの心情』『P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー』P・G・ウッドハウス

The Clicking of Cuthbert(1922)/The Heart of a Goof(1926)Pelham Grenville Wodehouse ペラム・グレンヴィル・ウッドハウスといえば、何といってもジーヴスシリーズが人口に膾炙しています。 しかし、ウッドハウスは九十三歳で亡くなるまで、途轍もな…

『蛾』ロザリンド・アッシュ

Moths(1976)Rosalind Ashe ロザリンド・アッシュは、ミシェル・ジュリらと同じくサンリオSF文庫限定の作家で、他社からは訳本が出ていません。『蛾』はアイリス・マードックが、『嵐の通夜』はスティーヴン・キングが、それぞれ絶賛したと解説にあります…

『ワイズ・チルドレン』アンジェラ・カーター

Wise Children(1991)Angela Carter アンジェラ・カーターは、一九六〇年代末から七〇年代初め、少しだけ日本で暮らしたことがあるそうです。それが理由ではないでしょうが、カーターの作品はかなりの数、邦訳されています。 ただし、サンリオSF文庫で刊…

『犯罪王カームジン ―あるいは世界一の大ぼら吹き』ジェラルド・カーシュ

Karmesin: the World's Greatest Criminal or Most Outrageous Liar(2003)Gerald Kersh 中年以降の人であれば、ジェラルド・カーシュといって思い出すのは、ソノラマ文庫海外シリーズの『冷凍の美少女』ではないでしょうか。 いわゆる異色作家のひとりで、…

『冬の子供たち』マイクル・コニイ

Winter's Children(1974)Michael Greatrex Coney 一部の人に熱狂的に支持されつつ、一般には余り知られていないのをカルト的人気と呼ぶのなら、マイクル・コニイ(※1)なんて、正にピタリと当て嵌まるのではないでしょうか。 ネットを少し検索すれば、絶…

『解放されたフランケンシュタイン』ブライアン・W・オールディス

Frankenstein Unbound(1973)Brian Wilson Aldiss 中高生の頃はSFブームだったので、僕も人並みに内外のSF小説を読みました。けれど、ハードなものや、ぶっとんだ作風にはついてゆけず、早い時期に落ちこぼれてしまいました……。それからは、余り難しく…

『ジュリアとバズーカ』アンナ・カヴァン

Julia and the Bazooka(1970)Anna Kavan このブログへは、ほとんどの方が書名や作者名を検索して辿り着かれるようです。ですから、誰も興味を持たないような本や作者、ありふれた普通名詞のタイトル(『象』とか『台風の目』とか)だったりすると、アクセ…

『生ける屍』ピーター・ディキンスン

Walking Dead(1975)Peter Dickinson いくら好きでも、あの世に本を持ってゆくことはできませんから、ある時期がきたらネット古書店を開業して、蔵書を売りさばく計画を立てています(詳しくは「ネット古書店開業の夢」)。 星の数ほどある他店との差別化を…

『ウィンブルドンの毒殺魔』『毒殺魔の十二カ月』ナイジェル・ウィリアムズ

The Wimbledon Poisoner(1990)/Scenes from a Poisoner's Life(1994)Nigel Williams 少し前にお洒落なデザインに変わったポケミスは、僕にとって敷居の高い本でした。 ペーパーバックがハードカバーより手に取りにくいというのもおかしな話ですが、ハー…

『深き森は悪魔のにおい』キリル・ボンフィリオリ

Something Nasty in the Woodshed(1976)Kyril Bonfiglioli SFブームの真っ只中の一九七八年に生まれ、わずか十年足らずで姿を消したサンリオSF文庫。マニアックなラインナップがディープなSFファンに支持され、廃刊後は高額なコレクターズアイテムと…

『キホーテ神父』グレアム・グリーン

Monsignor Quixote(1982)Graham Greene『ドン・キホーテ』ほど有名になると、そのパロディ作品も、タイトルだけもじったもの、ドン・キホーテ的な人物が登場するだけのものから、本格的なものまで、世界中に腐るほどあります。 有名なところでは、ヒュー・…

『どこまで行けばお茶の時間』アンソニー・バージェス

A Long Trip to Tea Time(1976)Anthony Burgess アンソニー・バージェスは、過去に『聖ヴィーナスの夕べ』の簡単な記事を書きましたが、あれは感想でも何でもなく、「雑文」として書いたものの一部なので、今回はきちんと取り上げたいと思います。 バージ…

『宇宙人フライデー』レックス・ゴードン

No Man Friday(a.k.a. First on Mars)(1956)Rex Gordon レックス・ゴードンの『宇宙人フライデー』は、一九五八年にハヤカワ・ファンタジイ(後のハヤカワSFシリーズ)から『宇宙人フライデイ』(井上一夫訳)のタイトルで発行されました。 その後、一…

『ラッキー・ジム』キングズリー・エイミス

Lucky Jim(1954)Kingsley Amis キングズリー・エイミスは、詩人としてデビューし、「怒れる若者たち(Angry Young Men)」と呼ばれる作家たちのひとりであり、英国の風刺小説やコミックフィクションの伝統を受け継いでいて、SFやミステリーも書き、酒や…

『ガイアナとブラジルの九十二日間』イーヴリン・ウォー

Ninety-two Days: The Account of a Tropical Journey Through British Guiana and Part of Brazil(1934)Evelyn Waugh「図書館を利用しない」「新本で手に入る本を古書店で購入しない」をモットーにしている僕ですが、イーヴリン・ウォーとの出会いは、た…

『フランス軍中尉の女』ジョン・ファウルズ

The French Lieutenant's Woman(1969)John Fowles 子どもの頃、夏休みに読書感想文を提出させられましたが、嫌で嫌で仕様がありませんでした。過去形になっていますが、実は今でも好きじゃない。いろいろ理屈をつけてますけど、サイトで書評をしないのは単…

「異色作家短篇集」

二度目の復刊となった早川書房の「異色作家短篇集」が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです(写真)。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありまし…

『聖ヴィーナスの夕べ』アンソニー・バージェス

The Eve of St. Venus(1964)Anthony Burgess アンソニー・バージェスの『聖ヴィーナスの夕べ』(写真)とは、こんな話です。 結婚式の前日、花婿が練習のつもりで、庭のヴィーナス像の薬指に結婚指輪をはめる。すると、不思議なことに石像の指が曲がり、指…