読書感想文(関田 涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

二十世紀の100冊〈私的海外文学年表〉


 今回で、記事の数がちょうど百になりました(一覧は除く)。

 元々「読書感想文」は、ホームページにおいて日記の一部として、ごくたまに書いていたものです。ある程度形式を決めて、定期的に更新するようになったのは、ブログに移行した二〇一一年五月以降のことでした。
 取り上げるのは新刊でも話題の本でもないので、時流から外れ、のんびりしたペースで楽しんで書くことができました。尤も、そのせいで、たった百の記事を書くのに何年もかかってしまいましたが……。

 僕にとって読書遍歴を晒すのは、それなりに勇気のいることです。読書好きであれば、どんな本を読んでいるかで、センスや好み、その人との相性が凡そ分かってしまうからです。いわば過去の恋人の特徴をこと細かく描写するようなもので、悪趣味の誹りを受ける可能性もあるでしょう。
 とはいえ、僕の記事が、誰かの快適な読書の助けにならないとも限りません。
 そう前向きに考え、しばらくは続けていこうかなと思っています。

 幸い、我が家の本棚には紹介したい本がやたらと溜まっているので、ネタが尽きる虞はなさそうです。というか、年に五十冊程度じゃ一生かかっても感想を書き切れないでしょうが……。

 さて、今回は「百」に因んで「ベスト100」のようなことをやりたいと思ったのですが、普通の「海外文学ベスト100」じゃ面白味がありません。
 かといって「現在絶版の海外文学ベスト100」だといつもの記事と被りますし、厳しい制約をつけすぎると百冊選ぶのが至難の業になります。

 そこで考えたのが、二十世紀を一年ごとに区切って百冊を選ぶこと。
 これなら余り頭を痛めず、自分のお気に入りの作品を選択できそうです。ただし、同じ作家で埋め尽くされるのを避けるため、以下のようなルールを設けました。

・一作家一作品のみ
・長編小説・中編小説・連作短編小説のみ(内容に関連のない短編小説集、戯曲、詩、ノンフィクションは除く)
・シリーズものは一作とみなし、最初の作品が発行された年にする
・生前未刊行などの場合は、雑誌に掲載された年や執筆された年を採用することもある


 これによって、その作家の本当に好きな作品(『城』『魔の山』『ハワーズ・エンド』『心は孤独な狩人』『皇帝のかぎ煙草入れ』『アメリカの鱒釣り』など)が抜けてしまったり、英米の作家に偏るのを避けるため、どうしても漏れてしまう作家(ジョゼフ・コンラッドヴァージニア・ウルフフィリップ・ロスアンソニー・バージェス、ミュリエル・スパーク、ポール・ボウルズジョン・アーヴィングなど)がいたり、短編の名手(ホルヘ・ルイス・ボルヘスリング・ラードナーピエール・アンリ・カミ、フラナリー・オコナーウィリアム・トレヴァーなど)の居場所がなかったりしました。おまけに、ド忘れしてる作品も結構ありそうですが、取り敢えずはこんな感じで……。


二十世紀の100冊〈私的海外文学年表〉

1901年 ブッデンブローク家の人々(トーマス・マン
1902年 超男性(アルフレッド・ジャリ
1903年 ジャン・クリストフ(ロマン・ロラン
1904年 生きていたパスカルルイジ・ピランデルロ
1905年 車輪の下ヘルマン・ヘッセ
1906年 ジャングル(アプトン・シンクレア)
1907年 一万一千本の鞭(ギョーム・アポリネール
1908年 赤毛のアン(L・M・モンゴメリ
1909年 狭き門(アンドレ・ジッド
1910年 マルテの手記(ライナー・マリア・リルケ

911 ピーターパンとウェンディ(ジェイムズ・マシュー・バリー)
1912年 最後の一線(ミハイル・アルツィバーシェフ)
1913年 失われた時を求めてマルセル・プルースト
1914年 ロクス・ソルス(レーモン・ルーセル
1915年 変身(フランツ・カフカ
1916年 不思議な少年〈ロマンス版〉(マーク・トウェイン
1917年 火星のプリンセスエドガー・ライス・バローズ
1918年 マイ・アントニーア(ウィラ・キャザー)
1919年 月と六ペンス(ウィリアム・サマセット・モーム
1920年 アルクトゥールスへの旅デイヴィッド・リンゼイ

1921年 阿Q正伝(魯迅
1922年 ユリシーズジェイムズ・ジョイス
1923年 青い麦(シドニー=ガブリエル・コレット
1924年 インドへの道(E・M・フォースター)
1925年 華麗なるギャツビー(F・スコット・フィッツジェラルド
1926年 騎兵隊(イサーク・バーベリ)
1927年 われら(エヴゲーニイ・ザミャーチン
1928年 巨匠とマルガリータミハイル・ブルガーコフ出版は1966年
1929年 響きと怒り(ウィリアム・フォークナー)
1930年 特性のない男(ロベルト・ムージル

1931年 大地(パール・S・バック)
1932年 夜の果てへの旅(ルイ=フェルディナン・セリーヌ
1933年 はまむぎ(レーモン・クノー
1934年 一握の塵(イーヴリン・ウォー
1935年 三つの棺(ジョン・ディクスン・カー
1936年 山椒魚戦争(カレル・チャペック
1937年 アフリカの日々(イサク・ディーネセン)
1938年 レベッカダフネ・デュ・モーリア
1939年 スウィム・トゥー・バーズにてフラン・オブライエン
1940年 タタール人の砂漠(ディーノ・ブッツァーティ

1941年 黄金の眼に映るものカーソン・マッカラーズ
1942年 異邦人(アルベール・カミュ
1943年 星の王子さま(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
1944年 宙ぶらりんの男(ソール・ベロー)
1945年 動物農場ジョージ・オーウェル
1946年 その男ゾルバニコス・カザンザキス
1947年 日々の泡(ボリス・ヴィアン
1948年 裸者と死者(ノーマン・メイラー
1949年 発狂した宇宙(フレドリック・ブラウン
1950年 太平洋の防波堤(マルグリット・デュラス

1951年 ライ麦畑でつかまえて(J・D・サリンジャー
1952年 老人と海アーネスト・ヘミングウェイ
1953年 失われた足跡(アレホ・カルペンティエル
1954年 悲しみよこんにちはフランソワーズ・サガン
1955年 ペドロ・パラモフアン・ルルフォ
1956年 時間割(ミシェル・ビュトール
1957年 夏への扉(ロバート・A・ハインライン
1958年 崩れゆく絆(チヌア・アチェベ)
1959年 ブリキの太鼓ギュンター・グラス
1960年 酔いどれ草の仲買人(ジョン・バース

1961年 キャッチ=22(ジョゼフ・ヘラー)
1962年 青白い炎(ウラジーミル・ナボコフ
1963年 石蹴り遊び(フリオ・コルタサル
1964年 ビッグ・サーの南軍将軍(リチャード・ブローティガン
1965年 魔術師(ジョン・ファウルズ
1966年 緑の家(マリオ・バルガス=リョサ
1967年 百年の孤独ガブリエル・ガルシア=マルケス
1968年 ユニヴァーサル野球協会ロバート・クーヴァー
1969年 スローターハウス5カート・ヴォネガット
1970年 夜のみだらな鳥(ホセ・ドノソ)

1971年 完全な真空(スタニスワフ・レム
1972年 見えない都市(イタロ・カルヴィーノ
1973年 重力の虹トマス・ピンチョン
1974年 カタリーナの失われた名誉(ハインリヒ・ベル)
1975年 死父(ドナルド・バーセルミ
1976年 蜘蛛女のキス(マヌエル・プイグ
1977年 星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン)
1978年 人生使用法(ジョルジュ・ペレック
1979年 銀河ヒッチハイクガイド(ダグラス・アダムス
1980年 薔薇の名前ウンベルト・エーコ

1981年 ラナーク −四巻からなる伝記(アラスター・グレイ
1982年 くそったれ! 少年時代(チャールズ・ブコウスキー
1983年 マイケル・K(J・M・クッツェー
1984年 ハザール事典(ミロラド・パヴィチ)
1985年 舞踏会へ向かう三人の農夫(リチャード・パワーズ
1986年 悪童日記アゴタ・クリストフ
1987年 エバ・ルーナイサベル・アジェンデ
1988年 ビラブド(トニ・モリスン)
1989年 日の名残りカズオ・イシグロ
1990年 不滅(ミラン・クンデラ

1991年 満たされぬ道(ベン・オクリ)
1992年 狙われたキツネ(ヘルタ・ミュラー
1993年 Xのアーチ(スティーヴ・エリクソン
1994年 供述によるとペレイラは……(アントニオ・タブッキ
1995年 白の闇(ジョゼ・サラマーゴ
1996年 マーティン・ドレスラーの夢(スティーヴン・ミルハウザー
1997年 アンダーワールドドン・デリーロ
1998年 野生の探偵たち(ロベルト・ボラーニョ)
1999年 青い脂(ウラジーミル・ソローキン)
2000年 紙葉の家(マーク・Z・ダニエレブスキー)