読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

日本

『やわらかい機械』ウィリアム・S・バロウズ

The Soft Machine(1961)William S. Burroughs ウィリアム・S・バロウズの『ソフトマシーン』といえば、『爆発した切符』『ノヴァ急報』と続く「ノヴァ三部作」の第一作であり、カットアップ、フォールドインといった技法を有名にした(バロウズのオリジナ…

『ポルの王子さま』カジノ=リブモンテーニュ

Le petit prince(1972)Kazino Ribumontênyu モリー・フルートの『鏡の国のアリス』は、原題が同じというだけで名作と全く同じ邦題にしてしまった悪しき例ですが、カジノ=リブモンテーニュの『ポルの王子さま』(写真)は違います。原題は『Le petit prince…

『フォックス・ウーマン』A・メリット、半村良

The Fox Woman(1949)A. Merritt(Ryō Hanmura fused Merritt's unfinished story in 1994) A・メリット(日本では本名の「エイブラハム・メリット」と記載されることもある)はパルプマガジン全盛期に活躍した作家です。 SFというより、幻想味の強いフ…

『快楽亭ブラック集』快楽亭ブラック

Kairakutei Black I 明治・大正時代、英国人の噺家が人気を博していました。彼の名は、初代快楽亭ブラック。 幼少の頃に日本を訪れたブラックは、両親が帰国した後も日本に留まり、やがて日本人の養子となり、日本人と結婚もしました(本名はヘンリー・ジェ…

『藤子・F・不二雄大全集』藤子・F・不二雄

これまでに数多くの失敗や、誤った選択をしてきましたが、後悔することはほとんどなく、「ま、いっか」で生きてきました。 ところが、たったひとつだけ、悔やんでも悔やみ切れないことがあります。 余りに悔しいのと、情けないのとで、これまで親しい人にも…

『ロマンス島』手塚治虫

本日、「手塚治虫文庫全集」の全巻購入特典である『ロマンス島』(※)が届きました。 一応、箱入りの上製本でしたが、期待が大きかった分、やや安っぽい作りに拍子抜けしました(写真)。サイズはB6判で、漫画部分は百一頁。巻末には文庫全集と同じく手塚…

『野球殺人事件』田島莉茉子

「折角だから、野球つながりでいこう」と思い、古い本を引っぱり出してきました。それが前回少し触れた、田島莉茉子の『野球殺人事件』(1951)です。「田島莉茉子は覆面作家で、その正体は大井廣介らしい」「埴谷雄高や坂口安吾もかかわっているらしい(※)…

『旧聞日本橋』長谷川時雨

気がつくと、これまで女性の作家をひとりも選んでいませんでした。 別に深い意味はないつもりだったんですが、よくよく考えてみると、僕の蔵書に占める女流作家の割合は圧倒的に低い。これは読書の傾向にもよるのかも知れません(こちらを参照)。 とはいえ…

『F VOICE』藤子・F・不二雄

今回は、本ですらありません……。 前から考えていたことを「読書感想文」にかこつけて、強引に語ってしまおうと思います。 二〇一〇年最後の更新ということで、ご容赦ください。 本日、「藤子・F・不二雄大全集」第2期全巻購入特典の「F VOICE」が届…

『冒険少女ミス・ワンダー』久松文雄

今回は、漫画です。 戦う少女に関しては、おたく的な興味ではなく、女の子たちにどの程度受け入れられるのか、ずっと気になっています。 セーラームーンやプリキュアなど成功例はあるにしても、青い鳥文庫の読者は、もう少し年齢が上ですし、彼女たちを対象…

『新潮現代国語辞典』

『新潮現代国語辞典』は、とてもユニークな辞書で、僕も大好きなんですが、先日、古い本の間から初版(1985)のパンフレットが出てきました(写真)。 これがまた面白いというか、時代を感じさせて興味深い。辞典の広告なのに、何と昭和軽薄体なんです! 余…

『黄色い鼠』井上ひさし

前回の読書感想文を書いたとき、「何だかもっと変なものを食う小説があったなあ」とぼんやり思っていました。 バクに似たような感じで、日本にはいなそうな動物だったはずなんですが、それが何だったか、誰の、何という作品に出てきたか、さっぱり思い出せず…

『宇宙人のしゅくだい』小松左京

忘れもしません。僕はこれを小学一年生のときに読みました。 もちろん、当時、青い鳥文庫は存在せず、僕が持っていたのは、確か「少年少女講談社文庫」という単行本でした。 後に僕は、国内外のSF小説にどっぷりはまることになりますが、それはこの小説の…

『山本周五郎探偵小説全集』山本周五郎

今、『山本周五郎探偵小説全集』(写真)を読んでいます(ちょうど一巻を読み終わったところなので、以下はそこまでの話になる)。 これが、思いのほか楽しい。 元々、少年向けの探偵小説(漫画も)が好きで、探偵小説家の書いたものはそこそこ読んでいるの…