読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

ポーランド

『サラゴサ手稿』ヤン・ポトツキ

Manuscrit trouvé à Saragosse(1804,1805)Jan Potocki 国書刊行会が「世界幻想文学体系」の一冊として、ヤン・ポトツキの『サラゴサ手稿』(写真)を刊行したのが一九八〇年。しかし、これは全訳ではなかったため、完訳が期待されました。 二十年後、東京…

『泰平ヨンの航星日記』スタニスワフ・レム

Dzienniki gwiazdowe(1957)/Kongres futurologiczny(1971)/Wizja lokalna(1982)Stanisław Lem スタニスワフ・レムは、『泰平ヨンの航星日記』に、刊行後もしつこく手を加え続けました。何と二十一世紀になっても、まだいじくっていたそうですから、相…

『タンゴ』スワヴォーミル・ムロージェック

Sławomir Mrożek 日本で『象』『所長』『鰐の涙』という三冊の短編集(漫画も収録されている)が発行されているスワヴォーミル・ムロージェック。しかし、世界的には作家や漫画家としてより、劇作家として知られています。 実際、日本オリジナルの戯曲集『タ…

『ライロニア国物語 ―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話』レシェク・コワコフスキ

13 bajek z królestwa Lailonii dla dużych i małych(1963)Leszek Kołakowski 哲学者レシェク・コワコフスキが、共産党時代のポーランドで刊行した寓話集。「大人も楽しめる」とあるとおり、当時の政府を諷刺している面もあります……なんて書くと一気に興味…

『浴槽で発見された手記』スタニスワフ・レム

Pamiętnik znaleziony w wannie(1961)Stanisław Lem この作品は、サンリオSF文庫より少し早い一九八〇年に『浴槽で発見された日記』というタイトルで集英社からも発行されていました(そちらは深見弾訳)。 集英社はSFに強いというイメージはありませ…

『虹』ワンダ・ワシレフスカヤ

Tęcza(1942)Wanda Wasilewska ポーランドからソ連に亡命し、スターリンと不倫の噂があったワンダ・ワシレフスカヤは、作家というより共産主義の活動家、政治家としての方が有名かも知れません。 また、小説はポーランド語で書かれていますが、ロシア語に訳…

『象』『所長』『鰐の涙』スワヴォーミル・ムロージェック

Sławomir Mrożek 不条理、ナンセンス、シュルレアリスム、ブラックユーモアあたりに分類される短編集は、長編を読むとき以上に集中力が必要です。 というのも、余程のめり込まないと途中で白けてしまうことがあるから。ちょっとでも「何だかなあ」と思ってし…

「異色作家短篇集」

二度目の復刊となった早川書房の「異色作家短篇集」が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです(写真)。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありまし…