読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

オーストリア

『皇帝に捧げる乳歯』フリッツ・フォン・ヘルツマノヴスキィ=オルランド

Der Gaulschreck im Rosennetz(1927)Fritz von Herzmanovsky-Orlando フリッツ・フォン・ヘルツマノヴスキィ=オルランドは生前、無名で、唯一刊行された小説が『皇帝に捧げる乳歯』(写真)です。 原題は「薔薇の網目にからめとられた駑馬のお化け」という…

『したい気分』エルフリーデ・イェリネク

Lust(1989)Elfriede Jelinek エルフリーデ・イェリネクは、二〇〇四年にノーベル文学賞を受賞しています。しかし、我が国ではほとんど話題になりませんでした。それどころか、「ポルノグラフィだ」と公然と批難する人までいて、何となく読まずにやり過ごし…

『夢小説』アルトゥル・シュニッツラー

Traumnovelle(1926)Arthur Schnitzler 森鷗外は、同じ年齢で、ともに医師でもあるオーストリアの作家アルトゥル・シュニッツラーに共感し、以下の七編を翻訳しています。 「短劔を持ちたる女」 「アンドレアス・タアマイエルが遺書」 「猛者」 「耶蘇降誕…

『サセックスのフランケンシュタイン』H・C・アルトマン

Frankenstein in Sussex/Fleiß und Industrie(1968)/Die Anfangsbuchstaben der Flagge. Geschichten für Kajüten, Kamine und Kinositze(1969)H. C. Artmann H・C・アルトマンは、数多くの言語を操ったことで知られています(その数三十以上?)。 さ…

『刺絡・死の舞踏他』カール・ハンス・シュトローブル

Lemuria: Seltsame Geschichten(1917)Karl Hans Strobl カール・ハンス・シュトローブルは、チェコで生まれた、ドイツ語を母語とするオーストリア人。『刺絡・死の舞踏他』は、彼の我が国唯一の短編集(全七編)(写真)です。 訳者の前川道介は、森鷗外が…

『より大きな希望』イルゼ・アイヒンガー

Die größere Hoffnung(1948)Ilse Aichinger イルゼ・アイヒンガーは、短編集『縛られた男』(1953)が有名です。長く未訳でしたが、今世紀になってからようやく邦訳が刊行されました。 同学社の『縛られた男』は、文芸書としては珍しく横組みです(日本語…

『不安 ペナルティキックを受けるゴールキーパーの……』ペーター・ハントケ

Die Angst des Tormanns beim Elfmeter(1970)Peter Handke ひたすら観客を罵倒し続ける『観客罵倒』という芝居でセンセーションを巻き起こしたペーター・ハントケは、インテリで、端正な顔立ち、長髪、スタイリッシュ(写真)。ヴィム・ヴェンダースの映画…