読書感想文(関田涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

オーストラリア

『リリアンと悪党ども』トニー・ケンリック

Stealing Lillian(1972)Tony Kenrick 海外のユーモア小説ファンとしては、主に一九七〇〜一九八〇年代に、角川文庫から大量に刊行されたトニー・ケンリックを無視するわけにはゆきません(※)。 ケンリックは一九九一年以降、小説を発表しておらず、英語版…

『熱帯産の蝶に関する二、三の覚え書き』ジョン・マリー

A Few Short Notes on Tropical Butterflies(2003)John Murray 唐突ですが、このブログの特徴をあげると、以下のようになるでしょうか(記事の質は不問。飽くまで体裁のみ)。・海外文学、なおかつ絶版本というマイナーなものを扱っている・更新頻度が低く…

『石の女』J・M・クッツェー

In the Heart of the Country(1977)J. M. Coetzee『ダスクランド』に続くJ・M・クッツェーの長編第二作。 二冊ともスリーエーネットワークの「アフリカ文学叢書」から発行されています。「この作品だけ読めばいいや」という作家もいます。しかし、僕にと…

『イリワッカー』ピーター・ケアリー

Illywhacker(1985)Peter Carey 詐欺師やほら吹きが小説に頻繁に登場するのは、作家自身が嘘つきだからです。 作家は、社会的地位が高いとか、物知りだとか、才能があるなどと考えてしまいがちですが、実際は、上手に嘘をつくという特殊技能を持つだけの人…

『台風の目』パトリック・ホワイト

The Eye of the Storm(1973)Patrick White 未訳の作品(作家)を渇望している翻訳小説好きの希望は「翻訳者(または編集者)の情熱」と「映画化」であることは過去にも述べました。 が、もうひとつ重要な要素があって、それは賞、特に「ノーベル文学賞の受…

『敵あるいはフォー』J・M・クッツェー

Foe(1986)J. M. Coetzee 南アフリカ出身の作家J・M・クッツェーの『敵あるいはフォー』(写真)の原題である『Foe』とは、ダニエル・デフォーの本名でもあり、「敵」という意味もあります。また、この作品は『ロビンソン・クルーソー』だけでなく、同じ…