読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読書感想文(関田 涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

『カンタベリー・パズル』H・E・デュードニー

The Canterbury Puzzles and Other Curious Problems(1907)Henry Ernest Dudeney 僕は数学パズルが大好きで、ヘンリー・アーネスト・デュードニーやサム・ロイド、マーティン・ガードナーらのパズルには昔から親しんできました。 ただし、パズルは作家より…

『ブラック・ユーモア傑作漫画集』ローラン・トポール、ロナルド・サールほか

一九七〇年に早川書房より刊行された「ブラック・ユーモア選集」は、同社の書籍の巻末広告にもよく掲載されていたので、ご存知の方も多いことでしょう(後に改訂版も発行された)。 広告には全六巻として、以下の書名が並んでいます。『幻の下宿人』ローラン…

『クローヴィス物語』サキ

The Chronicles of Clovis(1911)Saki 今回は珍しく新刊ですが、実をいうと書名は便宜上のものですし、作品の感想も書きません。じゃあ、何なのかというと……。 このブログの最大の目的は、本を購入する際の参考にしてもらうことです。 面白かった本を紹介し…

『予兆の島』ロレンス・ダレル

Prospero's Cell: A guide to the landscape and manners of the island of Corcyra(1945)Lawrence Durrell 前回はジェラルド・ダレルによるコルフ島(ケルキラ島、コルキュラ島)滞在記を扱いましたが、今回はその兄ロレンス・ダレルのコルフ島紀行です。…

『虫とけものと家族たち』『鳥とけものと親類たち』『風とけものと友人たち』ジェラルド・ダレル

My Family and Other Animals(1956)/Birds, Beasts, and Relatives(1969)/The Garden of the Gods(1978)Gerald Malcolm Durrell ジェラルド・ダレルは、『アレクサンドリア四重奏』で有名なロレンス・ダレルの弟……と一般的にいわれますが、僕にとって…

『マラキア・タペストリ』ブライアン・W・オールディス

The Malacia Tapestry(1976)Brian Wilson Aldiss アンソニー・バージェスは、早川書房の「アントニイ・バージェス選集」が予告倒れに終わりましたが、ブライアン・W・オールディスは、サンリオSF文庫で発行が予告されながら有耶無耶になってしまった本…

『釣魚大全』アイザック・ウォルトン、チャールズ・コットン、ロバート・ヴェナブルズ

The Universal Angler(1676):The Compleat Angler or the Contemplative Man's Recreation(1653)Izaak Walton/The Compleat Angler Being Instructions How to Angle for a Trout or Grayling in a Clear Stream(1676)Charles Cotton/The Experienc'd …

『ムーンタイガー』ペネロピ・ライヴリー

Moon Tiger(1987)Penelope Lively エジプト生まれの英国人ペネロピ・ライヴリーのブッカー賞受賞作。 彼女は児童文学者としても著名で、『トーマス・ケンプの幽霊』ではカーネギー賞も取っています。が、やはり注目すべきは歴史を題材にした長編でしょう。…

『生存者の回想』ドリス・レッシング

Memoirs of a Survivor(1974)Doris Lessing 二〇〇七年にノーベル文学賞を受賞したドリス・レッシング。 彼女の代表作といえば『黄金のノート』や『草は歌っている』を思い浮かべる人が多いでしょう。飽くまで個人的な印象ですが、長編は難解で固苦しく、…

『女だけの町 ―クランフォード』エリザベス・ギャスケル

Cranford(1853)Elizabeth Cleghorn Gaskell 今日の日本において、エリザベス・ギャスケルの知名度はさほど高くありません。『メアリ・バートン』『ルース』『北と南』など主要作品のほとんどが邦訳されているにもかかわらず、シャーロット・ブロンテの友人…

『ユーモア・スケッチ傑作展〈1〜3〉』『すべてはイブからはじまった』ロバート・ベンチリー、スティーヴン・リーコックほか

このブログの「書名一覧」をみていただくと一目瞭然ですが、僕はユーモア小説に目がありません。 ミステリーや恋愛小説などは年に一冊読むかどうかであるにもかかわらず、広い意味でのユーモア文学は書棚の半分を占めるといっても過言ではないでしょう。 当…

『蜜の味』シーラ・ディレーニー

A Taste of Honey(1958)Shelagh Delaney 十代でデビューした女流作家というと、フランソワーズ・サガンを真っ先に思い出す人が多いと思いますが、シーラ・ディレーニーもサガンと同じ十八歳で世に出ました(作家というより脚本家だが)。 残念ながら輝きは…

『ヒヨコ天国』P・G・ウッドハウス

Love Among the Chickens(1906)Pelham Grenville Wodehouse 僕にとってペラム・グレンヴィル・ウッドハウスは、長い間、幻の作家でした。 彼の名前を知った頃、戦前の書籍や、短編が掲載された「新青年」は入手困難で、新刊で読めるのは雑誌やアンソロジー…

『パステル都市』M・ジョン・ハリスン

The Pastel City(1971)Michael John Harrison 古書をインターネットを介して購入できる時代となり、サンリオSF文庫も以前に比べ安価かつ容易にコレクションできるようになりました。 とはいえ、三十年以上前に刊行された文庫本ですから、コンディション…

『エバ・ペロンの帰還』V・S・ナイポール

The Return of Eva Perón and the Killings in Trinidad(1980)Vidiadhar Surajprasad Naipaul ヴィディアダハル・スラヤプラサド・ナイポールは、トリニダード島生まれのインド系の作家です。現在はイギリスに住み、二〇〇一年にはノーベル文学賞を受賞し…

『三等水兵マルチン』タフレール

Pincher Martin, O. D.: a Story of the Inner Life of the Royal Navy(1916)Henry Taprell Dorling ウィリアム・ゴールディングの『ピンチャー・マーティン』の感想を書いた際、少し触れたヘンリー・タフレール・ドーリング(ペンネームは、タフレール)…

『ピンチャー・マーティン』ウィリアム・ゴールディング

Pincher Martin: the Two Deaths of Christopher Martin(1956)William Golding『蝿の王』のように誰もが知っている作品があり、『我が町、ぼくを呼ぶ声』のようなゴミもあるノーベル賞作家ウィリアム・ゴールディング。 どうも過大評価されている、という…

『ジャングル・ブック』『続ジャングル・ブック』ラドヤード・キプリング

The Jungle Book(1894)/The Second Jungle Book(1895)Joseph Rudyard Kipling『ジャングル・ブック』と聞くと、ウォルト・ディズニーの遺作であるアニメーション映画を思い浮かべる人が多いと思います。幼少時の僕も、映画の絵本版で『ジャングル・ブッ…

『東方旅行記』ジョン・マンデヴィル

The Travels of Sir John Mandeville(1357)John Mandeville マルコ・ポーロの『東方見聞録』(一二九八)を知らない人はいないでしょうが、ジョン・マンデヴィルの『東方旅行記』(※1)となると、多くの人は「何だ、それ?」と首を傾げるかも知れません。…

『ゴルフ人生』『ゴルきちの心情』『P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー』P・G・ウッドハウス

The Clicking of Cuthbert(1922)/The Heart of a Goof(1926)Pelham Grenville Wodehouse ペラム・グレンヴィル・ウッドハウスといえば、何といってもジーヴスシリーズが人口に膾炙しています。 しかし、ウッドハウスは九十三歳で亡くなるまで、途轍もな…

『蛾』ロザリンド・アッシュ

Moths(1976)Rosalind Ashe ロザリンド・アッシュは、ミシェル・ジュリらと同じくサンリオSF文庫限定の作家で、他社からは訳本が出ていません。『蛾』はアイリス・マードックが、『嵐の通夜』はスティーヴン・キングが、それぞれ絶賛したと解説にあります…

『ワイズ・チルドレン』アンジェラ・カーター

Wise Children(1991)Angela Carter アンジェラ・カーターは、一九六〇年代末から七〇年代初め、少しだけ日本で暮らしたことがあるそうです。それが理由ではないでしょうが、カーターの作品はかなりの数、邦訳されています。 ただし、サンリオSF文庫で刊…

『犯罪王カームジン ―あるいは世界一の大ぼら吹き』ジェラルド・カーシュ

Karmesin: the World's Greatest Criminal or Most Outrageous Liar(2003)Gerald Kersh 中年以降の人であれば、ジェラルド・カーシュといって思い出すのは、朝日ソノラマ文庫海外シリーズ(※1)の『冷凍の美少女』ではないでしょうか。 いわゆる異色作家…

『冬の子供たち』マイクル・コニイ

Winter's Children(1974)Michael Greatrex Coney 一部の人に熱狂的に支持されつつ、一般には余り知られていないのをカルト的人気と呼ぶのなら、マイクル・コニイ(※1)なんて、正にピタリと当て嵌まるのではないでしょうか。 ネットを少し検索すれば、絶…

『解放されたフランケンシュタイン』ブライアン・W・オールディス

Frankenstein Unbound(1973)Brian Wilson Aldiss 中高生の頃はSFブームだったので、僕も人並みに内外のSF小説を読みました。けれど、ハードなものや、ぶっとんだ作風にはついてゆけず、早い時期に落ちこぼれてしまいました……。それからは、余り難しく…

『ジュリアとバズーカ』アンナ・カヴァン

Julia and the Bazooka(1970)Anna Kavan このブログへは、ほとんどの方が書名や作者名を検索して辿り着かれるようです。ですから、誰も興味を持たないような本や作者、ありふれた普通名詞のタイトル(『象』とか『台風の目』とか)だったりすると、アクセ…

『生ける屍』ピーター・ディキンスン

Walking Dead(1975)Peter Dickinson いくら好きでも、あの世に本を持ってゆくことはできませんから、ある時期がきたらネット古書店を開業して、蔵書を売りさばく計画を立てています(詳しくは「ネット古書店開業の夢」)。 星の数ほどある他店との差別化を…

『ウィンブルドンの毒殺魔』『毒殺魔の十二カ月』ナイジェル・ウィリアムズ

The Wimbledon Poisoner(1990)/Scenes from a Poisoner's Life(1994)Nigel Williams 少し前にお洒落なデザインに変わったポケミスは、僕にとって敷居の高い本でした。 ペーパーバックがハードカバーより手に取りにくいというのもおかしな話ですが、ハー…

『深き森は悪魔のにおい』キリル・ボンフィリオリ

Something Nasty in the Woodshed(1976)Kyril Bonfiglioli SFブームの真っ只中の一九七八年に生まれ、わずか十年足らずで姿を消したサンリオSF文庫。マニアックなラインナップがディープなSFファンに支持され、廃刊後は中古市場で高額なコレクターズ…

『キホーテ神父』グレアム・グリーン

Monsignor Quixote(1982)Graham Greene『ドン・キホーテ』ほど有名になると、そのパロディ作品も、タイトルだけもじったもの、ドン・キホーテ的な人物が登場するだけのものから、本格的なものまで、世界中に腐るほどあります。 有名なところでは、ヒュー・…

『どこまで行けばお茶の時間』アンソニー・バージェス

A Long Trip to Tea Time(1976)Anthony Burgess アンソニー・バージェスは、過去に『聖ヴィーナスの夕べ』の簡単な記事を書きましたが、あれは感想でも何でもなく、「雑文」として書いたものの一部なので、今回はきちんと取り上げたいと思います。 バージ…

『宇宙人フライデー』レックス・ゴードン

No Man Friday(a.k.a. First on Mars)(1956)Rex Gordon レックス・ゴードンの『宇宙人フライデー』は、一九五八年にハヤカワ・ファンタジイ(後のハヤカワ・SF・シリーズ)から『宇宙人フライデイ』(井上一夫訳)のタイトルで発行されました。 その後…

『ラッキー・ジム』キングズリー・エイミス

Lucky Jim(1954)Kingsley Amis キングズリー・エイミスは、詩人としてデビューし、「怒れる若者たち(Angry Young Men)」と呼ばれる作家たちのひとりであり、英国の風刺小説やコミックフィクションの伝統を受け継いでいて、SFやミステリーも書き、酒や…

『ガイアナとブラジルの九十二日間』イーヴリン・ウォー

Ninety-two Days: The Account of a Tropical Journey Through British Guiana and Part of Brazil(1934)Evelyn Waugh「図書館を利用しない」「新刊で手に入る本を古書店で購入しない」をモットーにしている僕ですが、イーヴリン・ウォーとの出会いは、た…

『フランス軍中尉の女』ジョン・ファウルズ

The French Lieutenant's Woman(1969)John Fowles 子どもの頃、夏休みに読書感想文を提出させられましたが、嫌で嫌で仕様がありませんでした。過去形になっていますが、実は今でも好きじゃない。いろいろ理屈をつけてますけど、サイトで書評をしないのは単…

『異色作家短編集』

早川書房の異色作家短篇集が来月で完結します。洒落た装幀に魅かれて「ちょっと高いなあ」と思いつつ買い続けており、結局、全巻揃えてしまいそうです。 前の版を持っているのもあり、別の短編集などで読んだ作品もありましたが、よい機会なので、すべて読み…

『聖ヴィーナスの夕べ』アンソニー・バージェス

The Eve of St. Venus(1964)Anthony Burgess(前略) アンソニー・バージェスの『聖ヴィーナスの夕べ』とは、こんな話です。 結婚式の前日、花婿が練習のつもりで、庭のヴィーナス像の薬指に結婚指輪をはめる。すると、不思議なことに石像の指が曲がり、指…