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読書感想文(関田 涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

【あ】青い花(レーモン・クノー)赤い高粱(莫言)アシスタント(バーナード・マラマッド)アマゾンの皇帝(マルシオ・ソウザ)アメリカの果ての果て(ウィリアム・H・ギャス)アルクトゥールスへの旅(デイヴィッド・リンゼイ)荒れた海辺(ジャン=ルネ・…

『数』フィリップ・ソレルス

Nombres(1966)Philippe Sollers 作家でもあり思想家でもあるフィリップ・ソレルスは、雑誌「テル・ケル」や「アンフィニ」の主催者としても知られています。 彼の作風を一言でいうと、前衛的で難解。処女長編の『奇妙な孤独』、日本では文庫化もされた『女…

『だれがコロンブスを発見したか』『そしてだれも笑わなくなった』『嘘だといってよ、ビリー』『ゴッドファザーは手持ち無沙汰』『コンピューターが故障です』アート・バックウォルド

Down the Seine and Up the Potomac With Art Buchwald(1977)/The Buchwald Stops Here(1979)/Laid Back In Washington With Art Buchwald(1981)/While Reagan Slept(1983)/You Can Fool All of the People All the Time(1986)/I Think I Don’t Re…

『絢爛たる屍』ポピー・Z・ブライト

Exquisite Corpse(1996)Poppy Z. Brite サイコスリラーや猟奇ホラーに分類されるような小説・映画・漫画は、毎年のように話題になる作品が現れます。僕も嫌いじゃないので色々と試してみますが、刺激に慣れてきたのか、大きく驚かされることは少なくなって…

『亡き王子のためのハバーナ』ギジェルモ・カブレラ=インファンテ

La Habana para un infante difunto(1979)Guillermo Cabrera Infante ギジェルモ・カブレラ=インファンテは、処女長編の『TTT ―トラのトリオのトラウマトロジー』(Tres tristes tigres 一九六七)が二〇一四年になって、ようやく翻訳されました。 訳す…

『聖アントワヌの誘惑』ギュスターヴ・フローベール

La Tentation de saint Antoine(1874)Gustave Flaubert ギュスターヴ・フローベールといってすぐに思い浮かぶのは『ボヴァリー夫人』『感情教育』『サランボー』『紋切型辞典』といった作品たちでしょう。 そんな彼が何度も何度も書き直し、三十年もの歳月…

『バドティーズ大先生のラブ・コーラス』ウィリアム・コツウィンクル

The Fan Man(1974)William Kotzwinkle ウィリアム・コツウィンクルの小説のなかでは『ファタ・モルガーナ』が一番好きと書きましたが、それとは対極にありながら、別の意味で愛すべき作品が『バドティーズ大先生のラブ・コーラス』です。 いや、対極という…

『シェヘラザードの憂愁 ―アラビアン・ナイト後日譚』ナギーブ・マフフーズ

ليالى ألف ليلة(1981)نجيب محفوظ「古くて長い物語なら何でも受け入れるのか!」と自らに突っ込みたくなりますが、『千一夜物語』も勿論大好物です。 個々の物語も面白いけれど、何より枠組みが秀逸で、おまけに語り手のシェヘラザード自身が萌えキャラの元…

『ランゲルハンス島航海記』ノイロニムス・ノドゥルス・フリーゼル

Paralektikon - welches ist Abriß & Versuch einer umständlichen Historie von der Anlage und Umwelt der Langerhans'schen Insulae(1984)Neuronimus Nodulus Friesel「読書感想文」といいつつ、このブログは、コンプのためのリスト作りとか、中身の分…

『さあ、すわってお聞きなさい』エレン・クズワヨ

Sit Down and Listen: Stories from South Africa(1990)Ellen Kuzwayo エレン・クズワヨは、南アフリカでソーシャルワーカー、国会議員として活躍した女性です。一九八五年、七十歳を過ぎて出版した自伝『Call Me Woman』(※)が評判となり(ナディン・ゴ…

『スターシップと俳句』ソムトウ・スチャリトカル

Starship & Haiku(1981)Somtow Sucharitkul(a.k.a. S. P. Somtow) ソムトウ・スチャリトカル(S・P・ソムトウというペンネームもあり)は、タイ出身の指揮者・作曲家で、タイ王朝の血を引き、王位継承権も持っているという変わり種。SFやホラー小説…

『オルゴン・ボックス ―SFセックス・エネルギー計画』パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ

Conviene far bene l'amore(1975)Pasquale Festa Campanile パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレは、処女小説『La nonna Sabella』(一九五七)が大変好評だったにもかかわらず、映画の世界の方が肌に合ったのか、その後、あまり小説を書きませんでした…

『グアヴァ園は大騒ぎ』キラン・デサイ

Hullabaloo in the Guava Orchard(1998)Kiran Desai インド出身のキラン・デサイは二〇〇六年に『喪失の響き』で、女性としては最年少(三十五歳)でブッカー賞を受賞しました。 母親のアニタ・デサイも作家で、過去に三度もブッカー賞の最終候補に残りま…

『ミュンヒハウゼン男爵の科学的冒険』ヒューゴー・ガーンズバック

Baron Münchhausen's New Scientific Adventures(1915)Hugo Gernsback ヒューゴー賞は、SFの賞としては最も古く、最も知名度が高いのですが、その名の元となったヒューゴー・ガーンズバックの小説を読んだことがある人は、どれくらいいるでしょうか。 日…

『ケストナーの「ほらふき男爵」』エーリッヒ・ケストナー

Erich Kästner erzählt(1965)Erich Kästner ほらふき男爵ことカール・フリードリヒ・ヒエロニュムス・フォン・ミュンヒハウゼンは、十八世紀のプロイセンに実在した貴族です。 ミュンヒハウゼン男爵は、ほら話が得意で、館に招いた客たちに荒唐無稽な冒険…

『野蛮人との生活 ―スラップスティック式育児法』シャーリイ・ジャクスン

Life Among the Savages(1953)Shirley Hardie Jackson ここのところ、ちょっとしたシャーリイ・ジャクスンブームらしく、長編や短編集の新訳が出版され続けています(※)。ここ一年以内にも『絞首人』『日時計』『なんでもない一日』(全訳ではない)が新…

『決戦! プローズ・ボウル』ビル・プロンジーニ、バリー・N・マルツバーグ

Prose Bowl(1980)Bill Pronzini, Barry Nathaniel Malzberg ビル・プロンジーニは、「名無しの探偵」シリーズで有名なミステリー作家。ただし、僕は推理小説をほとんど読まないので、エラリー・クイーン編の『新 世界傑作推理12選』に収録されている「朝飯…

『明日に別れの接吻を』ホレス・マッコイ

Kiss Tomorrow Goodbye(1948)Horace McCoy ホレス・マッコイは、アメリカよりもフランスで先に評価された作家です。 実存主義の元祖としてジャン=ポール・サルトルらに絶賛され、アーネスト・ヘミングウェイ、ウィリアム・フォークナー、ジョン・スタイン…

『カンタベリー・パズル』H・E・デュードニー

The Canterbury Puzzles and Other Curious Problems(1907)Henry Ernest Dudeney 僕は数学パズルが大好きで、ヘンリー・アーネスト・デュードニーやサム・ロイド、マーティン・ガードナーらのパズルには昔から親しんできました。 ただし、パズルは作家より…

『新カンタベリー物語』ジャン・レイ

Les Derniers Contes de Canterbury(1944)Jean Ray ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』は、古典だけあってパロディ作品も数多く存在します。 巡礼者がひとつずつ物語るという形式だけを真似たものから、ヘンリー・アーネスト・デュードニーの『…

『この狂乱するサーカス』ピエール・プロ

Delirium Circus(1977)Pierre Pelot 先日、古いハヤカワ文庫を整理していたとき、「文庫創刊10周年 総点数1000点突破! ダイナマイト1000」と書かれた帯をみつけました(一九八〇年刊行のスタニスワフ・レムの『泰平ヨンの航星日記』に巻かれていた)。 十…

『冷たい肌』アルベール・サンチェス=ピニョル

La pell freda(2002)Albert Sánchez Piñol ベルナルド・アチャーガの『オババコアック』のときにも書きましたが、アルベール・サンチェス=ピニョルの『冷たい肌』はスペイン文学(カスティーリャ語。話者数は約四億二千万人)ではなく、カタルーニャ文学(…

『かも猟』ユゴー・クラウス

De Metsiers(1950)Hugo Claus ジュリアン・グラックは二十八歳で『アルゴールの城にて』を出版し、ジャン=ルネ・ユグナンは二十四歳で『荒れた海辺』を出版しましたが、ユゴー・クラウスが『かも猟』を出版したのは二十一歳のときでした(執筆したのは十九…

『ユーラリア国騒動記』A・A・ミルン

Once on a Time(1917)Alan Alexander Milne アラン・アレクサンダー・ミルン(※1)といえば、何といっても『くまのプーさん』(一九二六)が有名ですが、『赤い館の秘密』(一九二二)といったミステリーや、P・G・ウッドハウスが「英語で書かれた最高…

『フォックスファイア』ジョイス・キャロル・オーツ

Foxfire: Confessions of a Girl Gang(1993)Joyce Carol Oates ノーベル文学賞の発表が近づくと、よく名前があがるのが、ジョイス・キャロル・オーツ。 何を読んでも面白い、外れの少ない作家のひとりですが、多作かつ様々なジャンル・長さの小説を書くタ…

『ウンブラ/タイナロン』レーナ・クルーン

Umbra: Silmäys Paradoksien arkistoon(1990)/Tainaron: Postia toisesta kaupungista(1985)Leena Krohn フィンランドの女流作家レーナ・クルーンは、日本でも人気があるらしく、沢山の訳本が出版されています。 映画『ペリカンマン』の原作である『ペリ…

『プレーボール! 2002年』ロバート・ブラウン

The New Atom's Bombshell(1980)Robert Browne(a.k.a. Marvin Karlins) ロバート・ブラウンの『プレーボール! 2002年』は、タイトルやカバーイラストをみると「宇宙を舞台に異星人と野球で対決するSF小説」と思われるかも知れません(寺沢武一の…

『ブラック・ユーモア傑作漫画集』ローラン・トポール、ロナルド・サールほか

一九七〇年に早川書房より刊行された「ブラック・ユーモア選集」は、同社の書籍の巻末広告にもよく掲載されていたので、ご存知の方も多いことでしょう(後に改訂版も発行された)。 広告には全六巻として、以下の書名が並んでいます。『幻の下宿人』ローラン…

『ブロードウェイの天使』デイモン・ラニアン

Damon Runyon デイモン・ラニアンは、ジャーナリスト出身で、スラングを多用した生き生きとした語り口の短編を得意とするという意味で、リング・ラードナーと共通点があります(ふたりとも、野球の記者としての功績が認められ、J・G・テイラー・スピンク賞…

『クローヴィス物語』サキ

The Chronicles of Clovis(1911)Saki 今回は珍しく新刊ですが、実をいうと書名は便宜上のものですし、作品の感想も書きません。じゃあ、何なのかというと……。 このブログの最大の目的は、本を購入する際の参考にしてもらうことです。 面白かった本を紹介し…

『予兆の島』ロレンス・ダレル

Prospero's Cell: A guide to the landscape and manners of the island of Corcyra(1945)Lawrence Durrell 前回はジェラルド・ダレルによるコルフ島(ケルキラ島、コルキュラ島)滞在記を扱いましたが、今回はその兄ロレンス・ダレルのコルフ島紀行です。…

『虫とけものと家族たち』『鳥とけものと親類たち』『風とけものと友人たち』ジェラルド・ダレル

My Family and Other Animals(1956)/Birds, Beasts, and Relatives(1969)/The Garden of the Gods(1978)Gerald Malcolm Durrell ジェラルド・ダレルは、『アレクサンドリア四重奏』で有名なロレンス・ダレルの弟……と一般的にいわれますが、僕にとって…

『マラキア・タペストリ』ブライアン・W・オールディス

The Malacia Tapestry(1976)Brian Wilson Aldiss アンソニー・バージェスは、早川書房の「アントニイ・バージェス選集」が予告倒れに終わりましたが、ブライアン・W・オールディスは、サンリオSF文庫で発行が予告されながら有耶無耶になってしまった本…

『汝、人の子よ』アウグスト・ロア=バストス

Hijo de hombre(1960)Augusto Roa Bastos アルゼンチンとブラジルに挟まれた小国パラグアイで最も名の知れた作家といえるのがアウグスト・ロア=バストス。『汝、人の子よ』は、彼の小説のなかでも『Yo el Supremo』(一九七四)と並んで評価が高い長編で…

『より大きな希望』イルゼ・アイヒンガー

Die größere Hoffnung(1948)Ilse Aichinger イルゼ・アイヒンガーは、短編集『縛られた男』(一九五三)が有名です。長く未訳でしたが、今世紀になってからようやく邦訳が刊行されました。 同学社の『縛られた男』は、文芸書としては珍しく横組みです(日…

『釣魚大全』アイザック・ウォルトン、チャールズ・コットン、ロバート・ヴェナブルズ

The Universal Angler(1676):The Compleat Angler or the Contemplative Man's Recreation(1653)Izaak Walton/The Compleat Angler Being Instructions How to Angle for a Trout or Grayling in a Clear Stream(1676)Charles Cotton/The Experienc'd …

『ハンバーガー殺人事件』リチャード・ブローティガン

So the Wind Won't Blow It All Away(1982)Richard Brautigan 翻訳文学を楽しむ者にとって、リチャード・ブローティガンといえば藤本和子です。その結びつきが強すぎて、果たしてどちらを好きなのか分からなくなるくらい。一九七〇年代、本国では忘れられ…

『黄金の眼に映るもの』カーソン・マッカラーズ

Reflections in a Golden Eye(1941)Carson McCullers 今からちょうど三年前、二〇一二年最後の読書感想文がカーソン・マッカラーズの『心は孤独な狩人』でした。今年最後の更新では、彼女の次の作品である『黄金の眼に映るもの』を取り上げてみます。 まず…

『テスケレ』ルーチョ・チェーヴァ

Teskeré(1971)Lucio Ceva 僕は中学生の頃(一九八〇年頃)、SFなかでも筒井康隆が大好きで、文庫になったものはほとんど買っていました。粗方読み尽くしてしまうと、とにかく少しでも似た感じの小説はないかと、飢えた狼のような目で内外の短編集を漁り…

『ジョン・バーリコーン ―酒と冒険の自伝的物語』ジャック・ロンドン

John Barleycorn(1913)Jack London ジャック・ロンドンは、何といっても『野性の呼び声(荒野の呼び声)』と『白い牙』の二作が有名なので、彼をよく知らない人はアーネスト・トンプソン・シートン(※)のような作家だと思っているかも知れません。 しかし…

『ムーンタイガー』ペネロピ・ライヴリー

Moon Tiger(1987)Penelope Lively エジプト生まれの英国人ペネロピ・ライヴリーのブッカー賞受賞作。 彼女は児童文学者としても著名で、『トーマス・ケンプの幽霊』ではカーネギー賞も取っています。が、やはり注目すべきは歴史を題材にした長編でしょう。…

『完全犯罪売ります』ユベール・モンテイエ

De quelques crimes parfaits(1969)Hubert Monteilhet 僕の読書は浅くて狭いので、滅多に手を出さないジャンルが結構あります。例えば、恋愛小説、ポルノグラフィ、ミステリー、ホラーなどは余程のことがない限り読みません。 別に毛嫌いしているわけでは…

『マーク・トウェインのバーレスク風自叙伝』マーク・トウェイン

Mark Twain's (Burlesque) Autobiography and First Romance(1871)Mark Twain 今は亡き旺文社文庫は、一九六五年に誕生し、二十二年間で約千百冊が発行されました。 サンリオ文庫より二か月早い一九八七年六月に廃刊(※1)になったのですが、『マーク・ト…

『われら』エヴゲーニイ・ザミャーチン

Мы(1927)Евге́ний Ива́нович Замя́тин エヴゲーニイ・イワーノヴィチ・ザミャーチンの『われら』の訳本は、一九七〇年に講談社より刊行され、後に文庫にもなりました。その後、岩波文庫に移りましたが、現時点では品切れのようです。 ま、岩波文庫なので、…

『ライロニア国物語 ―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話』レシェク・コワコフスキ

13 bajek z królestwa Lailonii dla dużych i małych(1963)Leszek Kołakowski 哲学者レシェク・コワコフスキが、共産党時代のポーランドで刊行した寓話集。「大人も楽しめる」とあるとおり、当時の政府を諷刺している面もあります……なんて書くと一気に興味…

『いたずらの天才』H・アレン・スミス

The Compleat Practical Joker(1953)Harry Allen Smith メジャーリーグベースボール(MLB)では、主に新入りに対して、いたずらが仕掛けられることがあります。かつてニューヨーク・ヤンキースに在籍していた松井秀喜もその餌食となり、豹柄の仮装をさ…

『生存者の回想』ドリス・レッシング

Memoirs of a Survivor(1974)Doris Lessing 二〇〇七年にノーベル文学賞を受賞したドリス・レッシング。 彼女の代表作といえば『黄金のノート』や『草は歌っている』を思い浮かべる人が多いでしょう。飽くまで個人的な印象ですが、長編は難解で固苦しく、…

『快楽亭ブラック集』快楽亭ブラック

Kairakutei Black I 明治・大正時代、英国人の噺家が人気を博していました。彼の名は、初代快楽亭ブラック。 幼少の頃に日本を訪れたブラックは、両親が帰国した後も日本に留まり、やがて日本人の養子となり、日本人と結婚もしました(本名はヘンリー・ジェ…

『エペペ』カリンティ・フェレンツ

Epepe(1970)Karinthy Ferenc ハンガリー語は、日本語と同じく「姓・名」の順に表記します(※1)。 つまり、カリンティ・フェレンツは、カリンティが苗字です。混乱した場合は、父親でやはり作家のカリンティ・フリジェシュ(※2)を思い出せば間違えずに…

『夜鳥』モーリス・ルヴェル

Les Oiseaux de nuit(1913)Maurice Level 訳者の田中早苗(女性に非ず)は、モーリス・ルヴェルに惚れ込み、大正時代に「新青年」誌に翻訳を発表し続けました。それをまとめた本が『夜鳥』で、一九二八年に春陽堂から刊行されました。『夜鳥』というタイト…