読書感想文(関田 涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

『世界珍探検』ピエール・アンリ・カミ

La famille Rikiki(1928)/Cami-Voyageur ou Mes aventures en Amérique(1927)Pierre Henri Cami このブログで取り上げる三冊目のピエール・アンリ・カミは、先日、入手したばかりの『世界珍探検』(裸本。写真)(※1)です。 ブログの書名一覧をみてい…

『英雄たちと墓』エルネスト・サバト

Sobre héroes y tumbas(1961)Ernesto Sabato エルネスト・サバトの『英雄たちと墓』(写真)は、世界の目がラテンアメリカ文学に注がれるきっかけとなったといわれるほど重要な作品です。 処女作の『トンネル』から十三年をおいて発表されただけあって、質…

『トンネル』エルネスト・サバト

El túnel(1948)Ernesto Sabato ふと気づくと、昨年、一昨年とアルゼンチン文学を一冊も扱っていませんでした。重要な作家を数多く輩出している国の文学に、二年以上も触れなかったことに自分でも驚いています(感想を書いていないだけで読んではいるけど)…

『フェリシアの旅』ウィリアム・トレヴァー

Felicia's Journey(1994)William Trevor 前回同様、短編小説の名手とされる作家の「長編小説」を取り上げてみます。 ウィリアム・トレヴァーは、訳本の多くが短編集(日本オリジナル編集を含む)で、アンソロジーや雑誌にも数多くの作品が収録されています…

『鏡よ、鏡』スタンリイ・エリン

Mirror, Mirror on the Wall(1972)Stanley Ellin 優れた短編の書き手として知られるスタンリイ・エリン(※1)。 ところが、彼はデビューした一九四八年から一九七八年までの三十年間に、たった三十五の短編しか書きませんでした(※2)。しかも、そのほと…

『オズワルド叔父さん』ロアルド・ダール

My Uncle Oswald(1979)Roald Dahl ロアルド・ダールほどの人気作家になると、絶版の本を選ぶのが大変です……。 が、彼も「異色作家短篇集」つながりなので、取り上げざるを得ません。「困ったなあ」と思いつつインターネットで検索すると、何と現在、『オズ…

『ニグロ民話集』リチャード・M・ドーソン

American Negro Folktales(1967)Richard Mercer Dorson 米国民間伝承の父といわれる民俗学者のリチャード・マーサー・ドーソンは、フィールドワークで数多くの民話を集めました。 また、「都市伝説(Urban Legend)」「フェイクロア(Fakelore:捏造された…

『ピーター=マックスの童話』ピーター・マックス

The Peter Max Land of Red, Land of Yellow, Land of Blue(1970)Peter Max サイケデリック(Psychedelia)とは、幻覚剤(LSDやマジックマッシュルームなど)によって齎される感覚をモチーフにしたサブカルチャー(アート、音楽、ファッションなど)で…

『自由の王 ―ローペ・デ・アギーレ』ミゲル・オテロ=シルバ

Lope de Aguirre, príncipe de la libertad(1979)Miguel Otero Silva シモン・ボリバル(一七八三-一八三〇)は、ラテンアメリカの国々をスペインから解放した英雄です。彼の名前は、ボリビア、そしてベネズエラ(ベネズエラ・ボリバル共和国)の国名にな…

『快盗ルビイ・マーチンスン』ヘンリー・スレッサー

Ruby Martinson(1957-1967)Henry Slesar ヘンリー・スレッサーは、テレビシリーズ『ヒッチコック劇場(アルフレッド・ヒッチコック・プレゼンツ、ザ・アルフレッド・ヒッチコック・アワー)』で最も多くの原作を提供した作家だそうです。そのせいか、邦訳…

『最後の一線』ミハイル・アルツィバーシェフ

У последней черты(1912)Михаил Петрович Арцыбашев ふと気づくと、昨年、一昨年とロシア文学を一冊も扱っていませんでした。これほどの大国の文学に、二年以上も触れなかったことに自分でも驚いています(感想を書いていないだけで読んではいるけど)。 …

『怪奇と幻想』ロバート・ブロック、レイ・ブラッドベリほか

1975年に角川文庫から刊行されたホラー小説のアンソロジー(全3巻)です。不気味なカバーイラストと各巻末に収められたノンフィクションが特徴です。

『のんぶらり島』ジャック・プレヴェール

Lettre des îles Baladar(1952)/Contes pour enfants pas sages(1947)Jacques Prévert ジャック・プレヴェールといえば、映画『天井桟敷の人々』の脚本、あるいはシャンソン『枯葉』の歌詞で有名です。 詩や児童文学でも高い評価を得ており、日本でも数…

『フォックス・ウーマン』A・メリット、半村良

The Fox Woman(1949)A. Merritt(Ryō Hanmura fused Merritt's unfinished story in 1994) A・メリット(日本では本名の「エイブラハム・メリット」と記載されることもある)はパルプマガジン全盛期に活躍した作家です。 SFというより、幻想味の強いフ…

『ティブル』イブラヒーム・アル・クーニー

التبر(1992)ابراهيم الكوني イブラヒーム・アル・クーニー(英語表記だとIbrahim al-Koni、またはIbrahim Kuni)は、サハラ砂漠の遊牧民(バダウィー、ベドウィン)であるトゥアレグ族の出身で、アラビア語のほかティフィナグ文字を用いることもあるそうで…

『おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ』アレッサンドロ・ボッファ

Sei una bestia, Viskovitz(1998)Alessandro Boffa アレッサンドロ・ボッファは、モスクワ生まれのイタリア人。ローマで育ち、大学卒業後は世界中を旅しているそうです。 大学で生物学を専攻した彼は、デビュー作の『おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ…

『トッパー氏の冒険』ソーン・スミス

Topper(1926)Thorne Smith 筑摩書房の「世界ユーモア文学全集」は十五巻+別冊三で刊行されました。それを十冊に編み直して、新装したのが「世界ユーモア文庫」(写真)です(文庫といっても、サイズは四六判)。 この巻を購入したのは勿論、P・G・ウッ…

『標的ナンバー10』ロバート・シェクリイ

The 10th Victim(1965)Robert Sheckley 昨年末から、リチャード・マシスン、レイ・ラッセル、シャーリイ・ジャクスン、ジョン・コリア、ダフネ・デュ・モーリア、マルセル・エイメ、フレドリック・ブラウンの作品を断続的にですが取り上げてきました。 海…

『ミッキーくんの宇宙旅行』フレドリック・ブラウン

The Star Mouse(1942)Fredric Brown『Mitkey Astromouse』(一九七一)という本があります。 これは、フレドリック・ブラウンの短編「星ねずみ」(The Star Mouse)をアン・スペルバーが子ども向けにリライトし、ハインツ・エーデルマン(映画『イエロー・…

『力の問題』ベッシー・ヘッド

A Question of Power(1973)Bessie Head ベッシー・ヘッドは、黒人の父親と白人の母親の間に生まれたカラード(混血)です。英国人の母は黒人の馬丁との子を宿したことで精神病院に入れられ、ヘッドはそこで生まれました。 やがて母は自殺し、遺してくれた…

『おにごっこ物語』『もう一つのおにごっこ物語』マルセル・エイメ

Les Contes du chat perché(1934-1946)Marcel Aymé マルセル・エイメの『Les Contes du chat perché』には数多くの邦訳があり、邦題も様々です(『おにごっこ物語』『牧場物語』『ゆかいな農場』『猫が耳のうしろをなでるとき』など)。「chat perché」は…

『シンデレラの呪われた城』ダフネ・デュ・モーリア

Rebecca(1938)Daphne du Maurier「はて。ダフネ・デュ・モーリアに、そんなタイトルの作品があったっけ?」と思われた方もいらっしゃることでしょう。 しかし、ちょっと考えれば、答えは導き出せます。ポプラ社文庫(現:ポプラポケット文庫)の可愛らしい…

『大いなる奥地』ジョアン・ギマランエス=ローザ

Grande Sertão: Veredas(1956)João Guimarães Rosa アルフレート・デーブリーンの『ベルリン・アレクサンダー広場』がドイツ版『ユリシーズ』なら、ジョアン・ギマランエス=ローザの『大いなる奥地』はブラジル版『ユリシーズ』です(デーブリーンも、ギマ…

『ジョン・コリア奇談集』ジョン・コリア

John Collier 一九七八年に創刊されたサンリオSF文庫は、一九八三年から主流文学やノンフィクションなどを扱う「サンリオ文庫」を独立させました。 そこから新たな作品を刊行し始めたのですが、既にサンリオSF文庫にラインナップされていたものをサンリ…

『こちらへいらっしゃい』シャーリイ・ジャクスン

Come Along with Me(1968)Shirley Jackson シャーリイ・ジャクスンの翻訳は『くじ』を嚆矢として、『山荘綺談』へと続くわけですが、その次が『こちらへいらっしゃい』だったのが何とも不可思議です。 というのも、この本は、遺作となった未完の小説「こち…

『インキュバス』レイ・ラッセル

Incubus(1976)Ray Russell レイ・ラッセルは、様々なジャンルの小説を書きましたが、特に評価が高いのはホラー小説です。 ただし、日本では短編集が二冊に、長編が一冊しか出版されていません。 不幸中の幸いというべきか、ニューゴシック三部作の「血の伯…

『奇術師の密室』リチャード・マシスン

Now You See It ...(1995)Richard Matheson リチャード・マシスンの小説は、数多く映画化されています(『アイ・アム・レジェンド』「激突!」『ある日どこかで』『縮みゆく人間』『奇蹟の輝き』「運命のボタン」などなど)。 特に短編の評価が高く、個人…

『二人の女と毒殺事件』アルフレート・デーブリーン

Die beiden Freundinnen und ihr Giftmord(1924)Alfred Döblin アルフレート・デーブリーンは、最近になって叙事詩『マナス』や短編集『たんぽぽ殺し』などが刊行されるなど、ちょっとしたブームになっています。しかし、何をおいても読んでおきたいのは、…

『サセックスのフランケンシュタイン』H・C・アルトマン

Frankenstein in Sussex/Fleiß und Industrie(1968)/Die Anfangsbuchstaben der Flagge. Geschichten für Kajüten, Kamine und Kinositze(1969)Hans Carl Artmann ハンス・カール・アルトマンは、数多くの言語を操ったことで知られています(その数三十…