読書感想文(関田 涙)

関田 涙(せきた・なみだ)

書名一覧

絶版、品切重版未定、残部僅少、限定版、自費出版、高価な本、非売品など、少しだけ手に入れにくい本の感想文を書いています。ほとんどが海外文学、翻訳小説です。

『コスミック・レイプ』シオドア・スタージョン

The Cosmic Rape(1958)Theodore Sturgeon SFファンは絶賛するのにもかかわらず、「何のこっちゃ分からない」と首を傾げたくなる作家がいます(グレッグ・イーガンなどはSFファンにもよく分からないらしいから除外する。また、僕の知識はン十年前で止ま…

『魚雷をつぶせ』ジョルジュ・ランジュラン

Torpillez la torpille(1964)George Langelaan 早川書房の叢書「異色作家短篇集」で個人短編集が刊行された十七人の作家の、それ以外の書籍を取り上げようと思い立ちましたが、最も選択肢が少ないのがジョルジュ・ランジュランです(※)。 何しろ『蠅』以…

『夜の冒険者たち』ジャック・フィニイ

The Night People(1977)Jack Finney 外国語をカナ書きする際、最大の問題は、表記にばらつきが出てしまうことです。 厄介なのが固有名詞で、このブログの場合、特に人名の表記に悩まされています。「統一のため、書籍に記されている著者名とは異なる表記を…

『盲目の梟』サーデグ・ヘダーヤト

بوف کور(1937)صادق هدایت オマル・ハイヤームの『ルバイヤート』の編纂でも知られるサーデグ・ヘダーヤトは、現代ペルシア文学における最も重要な作家です。「文学イコール韻文」だったペルシアにおいて、散文を普及させた功績が讃えられています。 日本に…

『そうはいっても飛ぶのはやさしい』イヴァン・ヴィスコチル/カリンティ・フリジェシュ

Vždyť přece létat je snadné(1963)Ivan Vyskočil / Karinthy Frigyes『そうはいっても飛ぶのはやさしい』は、生まれ育った国も世代も異なるふたりの作家を抱き合わせた、非常に珍しい本です。 併録は、ボリュームのある文学全集などではよくありますが、…

『牡猫ムルの人生観』E・T・A・ホフマン

Lebens-Ansichten des Katers Murr nebst fragmentarischer Biographie des Kapellmeisters Johannes Kreisler in zufälligen Makulaturblättern(1819, 1821)Ernst Theodor Amadeus Hoffmann エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマンは、ペンネーム…

『ドイツの田舎宿で』キャサリン・マンスフィールド

In a German Pension(1911)Katherine Mansfield 短編しか書かなかったキャサリン・マンスフィールドは、日本でも数多くの短編集が発行されています。原書どおりに収録したものもあれば、独自に編まれたものもあります。 例えば、文化書房博文社の『ドイツ…

『スイミング・プール』フランソワ・オゾン

Swimming Pool(2003)François Ozon フランソワ・オゾン監督の『スイミング・プール』は、ひどい映画でした。 人物造形もストーリーも滅茶苦茶で、最初から回収する気のない謎を投げっ放して終わるという質の悪さが目立ちます。「どう解釈しようが自由」な…

ミステリーっぽい短編小説

海外の、ミステリー作家以外が書いたミステリーっぽい短編小説を紹介しています。

『アイオワ野球連盟』W・P・キンセラ

The Iowa Baseball Confederacy(1986)William Patrick Kinsella ウィリアム・パトリック・キンセラは、二〇一六年に、カナダにおける安楽死法で自ら死を選びました(『かも猟』のユゴー・クラウスも合法的な安楽死だった)。 彼は、一九八〇年代以降の代表…

『砂塵の町』マックス・ブランド

Destry Rides Again(1930)Max Brand マックス・ブランドは多作な作家でしたが、ウエスタン小説は日本で売れないというジンクス(事実?)があるせいか、訳本は僅か二冊のみ(※)。 しかも、代表作の『砂塵の町』(写真)は一九八五年になって、ようやく翻…

『ポルの王子さま』カジノ=リブモンテーニュ

Le petit prince(1972)Kazino Ribumontênyu モリー・フルートの『鏡の国のアリス』は、原題が同じというだけで名作と全く同じ邦題にしてしまった悪しき例ですが、カジノ=リブモンテーニュの『ポルの王子さま』(写真)は違います。原題は『Le petit prince…

『消されない月の話』ボリス・ピリニャーク

Повесть непогашенной луны(1925)Борис Пильняк 春陽文庫というと、探偵小説、時代小説、大衆小説などを思い浮かべる人もいると思いますが、戦前は「春陽堂文庫」という名で、国内外の文学作品を刊行していました(春陽堂文庫、日本小説文庫、世界名作文庫…

『笑ガス』P・G・ウッドハウス

Laughing Gas(1936)Pelham Grenville Wodehouse このブログで、ペラム・グレンヴィル・ウッドハウスを取り上げるのは三回目となります。 ウッドハウスは二〇〇五年に突如、数多くの書籍が翻訳されました。あれよあれよという間に本棚がウッドハウスで埋ま…

『世界珍探検』ピエール・アンリ・カミ

La famille Rikiki(1928)/Cami-Voyageur ou Mes aventures en Amérique(1927)Pierre Henri Cami このブログで取り上げる三冊目のピエール・アンリ・カミは、『世界珍探検』(写真)(※1)です。 ブログの書名一覧をみていただくと分かるとおり、僕は「…

『英雄たちと墓』エルネスト・サバト

Sobre héroes y tumbas(1961)Ernesto Sabato エルネスト・サバトの『英雄たちと墓』(写真)は、世界の目がラテンアメリカ文学に注がれるきっかけとなったといわれるほど重要な作品です。 処女作の『トンネル』から十三年をおいて発表されただけあって、質…

『トンネル』エルネスト・サバト

El túnel(1948)Ernesto Sabato ふと気づくと、昨年、一昨年とアルゼンチン文学を一冊も扱っていませんでした。重要な作家を数多く輩出している国の文学に、二年以上も触れなかったことに自分でも驚いています(感想を書いていないだけで読んではいるけど)…

『フェリシアの旅』ウィリアム・トレヴァー

Felicia's Journey(1994)William Trevor 前回同様、短編小説の名手とされる作家の「長編小説」を取り上げてみます。 ウィリアム・トレヴァーは、訳本の多くが短編集(日本オリジナル編集を含む)で、アンソロジーや雑誌にも数多くの作品が収録されています…

『鏡よ、鏡』スタンリイ・エリン

Mirror, Mirror on the Wall(1972)Stanley Ellin 優れた短編の書き手として知られるスタンリイ・エリン(※1)。 ところが、彼はデビューした一九四八年から一九七八年までの三十年間に、たった三十五の短編しか書きませんでした(※2)。しかも、そのほと…

『オズワルド叔父さん』ロアルド・ダール

My Uncle Oswald(1979)Roald Dahl ロアルド・ダールほどの人気作家になると、絶版の本を選ぶのが大変です……。 が、彼も「異色作家短篇集」つながりなので、取り上げざるを得ません。「困ったなあ」と思いつつインターネットで検索すると、何と現在、『オズ…

『ニグロ民話集』リチャード・M・ドーソン

American Negro Folktales(1967)Richard Mercer Dorson 米国民間伝承の父といわれる民俗学者のリチャード・マーサー・ドーソンは、フィールドワークで数多くの民話を集めました。 また、「都市伝説(Urban Legend)」「フェイクロア(Fakelore:捏造された…

『ピーター=マックスの童話』ピーター・マックス

The Peter Max Land of Red, Land of Yellow, Land of Blue(1970)Peter Max サイケデリック(Psychedelia)とは、幻覚剤(LSDやマジックマッシュルームなど)によって齎される感覚をモチーフにしたサブカルチャー(アート、音楽、ファッションなど)で…

『自由の王 ―ローペ・デ・アギーレ』ミゲル・オテロ=シルバ

Lope de Aguirre, príncipe de la libertad(1979)Miguel Otero Silva シモン・ボリバル(一七八三-一八三〇)は、ラテンアメリカの国々をスペインから解放した英雄です。彼の名前は、ボリビア、そしてベネズエラ(ベネズエラ・ボリバル共和国)の国名にな…

『快盗ルビイ・マーチンスン』ヘンリー・スレッサー

Ruby Martinson(1957-1967)Henry Slesar ヘンリー・スレッサーは、テレビシリーズ『ヒッチコック劇場(アルフレッド・ヒッチコック・プレゼンツ、ザ・アルフレッド・ヒッチコック・アワー)』で最も多くの原作を提供した作家だそうです。そのせいか、邦訳…

『最後の一線』ミハイル・アルツィバーシェフ

У последней черты(1912)Михаил Петрович Арцыбашев ふと気づくと、昨年、一昨年とロシア文学を一冊も扱っていませんでした。これほどの大国の文学に、二年以上も触れなかったことに自分でも驚いています(感想を書いていないだけで読んではいるけど)。 …

『怪奇と幻想』ロバート・ブロック、レイ・ブラッドベリほか

1975年に角川文庫から刊行されたホラー小説のアンソロジー(全3巻)です。不気味なカバーイラストと各巻末に収められたノンフィクションが特徴です。

『のんぶらり島』ジャック・プレヴェール

Lettre des îles Baladar(1952)/Contes pour enfants pas sages(1947)Jacques Prévert ジャック・プレヴェールといえば、映画『天井桟敷の人々』の脚本、あるいはシャンソン『枯葉』の歌詞で有名です。 詩や児童文学でも高い評価を得ており、日本でも数…

『フォックス・ウーマン』A・メリット、半村良

The Fox Woman(1949)A. Merritt(Ryō Hanmura fused Merritt's unfinished story in 1994) A・メリット(日本では本名の「エイブラハム・メリット」と記載されることもある)はパルプマガジン全盛期に活躍した作家です。 SFというより、幻想味の強いフ…

『ティブル』イブラヒーム・アル・クーニー

التبر(1992)ابراهيم الكوني イブラヒーム・アル・クーニー(英語表記だとIbrahim al-Koni、またはIbrahim Kuni)は、サハラ砂漠の遊牧民(バダウィー、ベドウィン)であるトゥアレグ族の出身で、アラビア語のほかティフィナグ文字を用いることもあるそうで…